2022年5月11日、日本中が衝撃に包まれた上島竜兵さんの訃報から、1年と4カ月が経ちました。妻である上島光さんも「思ってもいなかった」出来事だったといいます。

 ここでは、光さんによるエッセイ『竜ちゃんのばかやろう』(KADOKAWA)から一部を抜粋。亡くなる2日前から当日にかけての竜兵さんの様子を振り返ります。(全2回の1回目/後編を読む)

上島竜兵さん ©文藝春秋

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あの日の出来事

 2022年のゴールデン・ウィーク中、私は埼玉県の実家に帰っていました。

 ずっとコロナ禍で実家に帰っていなかったこともあり、父が介護施設に入居してからひとりで暮らす母と、久し振りに過ごしたいと考えていました。

 その連休の最後の日が、5月8日の日曜日。

 夜に母とふたりで前々から放送を楽しみにしていた、『ドリフに大挑戦スペシャル』(フジテレビ)を見ることになっていたのです。

 加藤茶さんや高木ブーさん、ご健在だった仲本工事さんら、ドリフのレジェンドメンバーに加え、カンニング竹山さん、劇団ひとりさん、ハライチの澤部佑さんなど、豪華な出演者たちとともにダチョウ倶楽部も出演して、ドリフの爆笑コントに挑戦するという番組でした。

「竜ちゃんのコント、ウケるかな?」

 そんな風に思いながらチャンネルを合わせたのですが、画面に登場した竜ちゃんは、いつもと違っていました。というより別人のように、どこか心ここにあらずというような、まったく生気のない表情だったのです。

 コントの台本通り演じてはいるものの、ただ段取りをこなしているだけで、竜ちゃんの内面からにじみ出る、“面白さ”や“おかしみ”のようなものがなく、思考が停止しているような顔でした。

「これはヤバい!」

 私は直感的にそう思いました。

 番組自体は4月10日に収録したものでしたが、それ以前から竜ちゃんは、塞ぎ込むようになり鬱っぽい感じだったのです。

 でもそれは、コロナ禍で家に閉じこもる生活を強いられ、その上、仲間たちと会えないことからくるストレスが溜まっているのかなという程度でした。