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「まったく生気のない表情だった…」上島竜兵が亡くなる2日前、妻が気づいた“小さな異変”

『竜ちゃんのばかやろう』転載 #1

2023/10/06
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 それでも竜ちゃんの様子を気にして、何度か「病院へ行って診てもらったら」と、勧めても「絶対いや」と、頑なに拒んでいたのです。

 そのうち、元気になるだろうと前向きに考えていたのですが、『ドリフに大挑戦スペシャル』の竜ちゃんを見て、竜ちゃんの心が砕けそうになっていることをはっきり感じ、深刻な事態に陥っていることを確信しました。

日常で感じた小さな異変

 翌9日、予定を切り上げて午前中に急いで帰宅。竜ちゃんは、どこへも出かけずに家の中にいました。

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 顔を見てまずはほっとひと安心し、急いでご飯を作って一緒に昼食を食べたのですが、この日の竜ちゃんは、やっぱり元気がありません。

 いつもなら、ぺちゃくちゃおしゃべりするのに、ほとんど口をきかずじっと黙り込むことの方が多かったように思います。

 前日のテレビで見た印象どおり、竜ちゃんは心を閉ざし、妻の私にさえ仮面をかぶって、ひとりだけの世界に引きこもっているように見えました。

 たまらず「大丈夫?」、「何か不安なことあるの?」と、言葉をかけましたが反応はありませんでした。

 話したくないときに、それ以上話しかけるとご機嫌を損ねて、感情的になることもあったので、それ以上、私は話しかけずにいたのです。

 竜ちゃんは、機嫌のよいときと悪いときがいつも両極端で、根本的には大人しく優しく善良な人なのですが、芸人という商売柄、ストレスを感じることも多く、それに耐えられなくなって爆発することもありました。

 その日は、いつものように睡眠導入剤を飲み、竜ちゃんは大人しく眠りにつきました。

©文藝春秋

 私はこのまま何事もなく、平和に過ぎていけばいいなと願っていました。

 竜ちゃんは、いつも早起きで、大抵、私が起きる頃には、すっかり目覚めていることが多く、翌日の5月10日の朝、私が顔を合わせたのは午前9時くらい。

 リビングに行くと、すでに竜ちゃんがソファに座っていました。

 昨日に続いて朝から元気がなく、声をかけても曖昧な返事しか返ってきません。

 そして、私のことなど眼中になかったのか、竜ちゃんはぷいっと自室に入ってしまったのです。