ツイッターでのやりとりから、DMやショートメッセージへと発展
アンバー・ハードとの別れで感情の津波に飲み込まれていた2018年春、マスクの人生に、やせぎすな体でサウンドを紡ぐクレア・ブーシェイ、芸名グライムスなるキャラクターが登場する。頭がよく魅力的なパフォーマンスアーティストの登場で、マスクは子どもが3人増えるし、ときおり家庭的な生活が訪れては消えるし、さらには、プッツンしてしまったラッパーと人前で一騒動くり広げるなんてことにもなる。
バンクーバー出身のグライムスは、マスクとデートするようになる前にアルバムを4枚出している。SFのテーマやミームから生み出される彼女の音楽は、ドリームポップやエレクトロニカの要素をちりばめた独特な肌触りのサウンドで人々を魅了する。知的冒険に乗りだす好奇心も持っていて、人工知能が暴走し、力を得る助けとならない人間を拷問にかける世界になるかもしれないとする思考実験、「ロコのバジリスク」など、かなり変わった考えにも興味を示している。言い換えれば、マスクと似た心配をしている。
だから、この思考実験に引っかけたツイートをするのに適当なイメージはないかとマスクがグーグル検索したとき、彼女がそのあたりを2015年のミュージックビデオ、『フレッシュ・ウィズアウト・ブラッド(Flesh without Blood)』に組み込んでいると知ることになったわけだ。こうしてふたりはツイッターでやりとりをするようになり、いまどきのことで、ダイレクトメッセージやショートメッセージのやりとりへと発展していった。
デートでフリーモント工場の見学へ
実はふたりは以前にも会ったことがあった。なんと、マスクがアンバー・ハードと一緒に乗ったエレベーターで、である。
「エレベーターで会ったの、覚えてる?」
夜遅くに、グライムスとマスク、ふたり一緒に話を聞いていたとき、彼女がこう切り出した。