経営危機に陥ったツイッターを440億ドルで突如、買収したイーロン・マスク。公式伝記『イーロン・マスク』(ウォルター・アイザックソン著、井口耕二訳)によれば、昨年10月末の買収クロージングが近づくにつれて、「めでたい」と喜んだり「状況は超きびしい」と落ち込んだりと、マスクの精神状態は乱高下していたそうだ。
そして遂には、マスク本人がツイッター本社に乗り込むことに。今明かされるマスクvs.ツイッター社の激烈なバトルとは?
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10月26日の水曜日、サンフランシスコのツイッター本社で待機するCEOと幹部たち。そこへ、洗面台を手にしたマスクが飛び込んできた。
「洗いざらいわかり合おう。パーティだぁ〜」
一悶着あるのではないかと予想していたCFO(最高財務責任者)たちの顔はほころんだ。
マスクはおもしろそうに社内を見て歩いた。おしゃれなことで知られるツイッター本社は、コーヒーバー、ヨガスタジオ、フィットネスルーム、ゲームアーケードが完備されている。
「私はいつも水道の水を飲んでいる」
上階には見晴らしのよいカフェがあり、手の込んだハンバーガーから厳格な菜食主義者向けのサラダにいたるまで、すべてが無料だ。トイレには「ジェンダーの多様性を尊重しよう」と標語が掲げられている。
会議室フロアにはノルウェーの天然水やリキッド・デスの缶など、5種類もの水が用意されていた。どれがいいですかと尋ねられたマスクは、こう返す。
「私はいつも水道の水を飲んでいる」
――先行きが懸念される幕開けである。職場観からして正反対だからだ。
ワークライフバランス無視で成果をあげてきたマッチョな猛烈ベンチャーカルチャーのマスクvs.おしゃれで多様性を大事にするホワイト企業で経営危機に陥ったツイッター社。文化の衝突は避けられない。