――周りから反対されても集めていたのはなぜですか。
田中 当時はみんなに見せようと思って集めていたわけじゃないから、ですかね。チャーミーをきっかけに呪物を集め始めましたけど、呪物にもいろんな種類があって、それぞれ呪物として扱われるようになった歴史や背景も違う。そういうのを調べると好奇心が湧いて、もっと集めたくなって。気づいたらどんどん収集していたって感じです。
――呪物を集めることに恐怖心はないのですか?
田中 怖いですよ。僕は2Kの木造アパートに住んでいて、1部屋まるまる呪物を飾る「呪物部屋」にしているんです。で、寝食はもう1部屋の方でしているんですけど……。1人暮らしなのに、寝ていると隣の呪物部屋から「パタパタッ」って足音が聞こえるんですよ。
それに、呪物を集めだしてから体調を崩したこともあって。知人からいわくつきの日本人形を預かったあと、肺炎になって入院しました。入院中、息苦しくて意識が朦朧とする中、その日本人形がずっと夢に出てくるんです。それは本当に怖かった。
たまたま体調を崩しただけかもしれないし、日本人形への恐怖心がストレスになって、体に悪影響を与えたのかもしれない。でも、それこそが“超自然的なパワー”の正体なのかも、とも思うんですよね。恐怖が体の内側を破壊していくというか。
「チャーミーにコントロールされているんじゃないかと思うことがあるんです」
――そんな経験をしてまで、呪物を集め続ける理由は?
田中 さっき話したような、「呪物の背景を知りたい」「どんな呪物があるのかを知りたい」って好奇心もあります。あとは時々、チャーミーにコントロールされているんじゃないかと思うことがあるんです。彼女が僕を使って、仲間を集めようとしているんじゃないかって。
部屋に1人でいると、ふと「なんでこんなに怖い思いをして、大金をはたいて呪物ばっかり集めてるんやろ」と我に返ることがあるんですよ。でも、そのたびにチャーミーの顔が浮かんで、気づいたらまた集め始めちゃって。
――チャーミーは「可愛がったら不幸になる」と言われているのですよね……?
田中 僕とチャーミーはビジネスパートナーなんで、プライベートでは仲の良いふりをしているだけなんですよ。一緒に仕事を終えて家に帰宅したら、「今日もありがとうございました、お疲れ様でした」とお礼を言って、そのあとは干渉しないようにしています。ビジネスでつながっているだけのドライな関係なんです。
でも、すごく不思議なんですけど、チャーミーが以前より明らかに可愛くなっているんですよね。初めて出会った時と今とでは、表情がぜんぜん違う。可愛がったら僕も危ないんで、そこは一線引くようにしていますけどね。でもやっぱり可愛くなっているんですよねぇ。
撮影=三宅史郎/文藝春秋