超自然的な力によって人間に禍福(かふく)をもたらすと信じられ、神聖視されている物体「呪物」。なかには、所有していると身の回りで不思議な現象が起きると言い伝えられているものもある。そんな呪物を150体以上蒐集し、「呪物コレクター」と呼ばれているのが怪談師の田中俊行さんだ。
今年7月には、呪物蒐集の日常を描いたコミックエッセイ『ぼくと呪物の奇妙な生活 呪物コレクター誕生秘話編』(竹書房)を上梓した田中さんに、150体以上の呪物と暮らす生活や、呪物を集め続ける理由などについて、話を聞いた。(全2回の2回目/1回目から続く)
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呪物と過ごすうえで欠かせないルーティン
――田中さんは、これまでに700万円以上かけ、150体以上の“呪物”をコレクションしているのですよね。しかも、普段から呪物を身に着けているとか。
田中俊行さん(以下、田中) 今日、ネックレスを2つ着けているんですが、2つとも呪物です。タイに、亡くなった方の皮を剥いで祀るという古い信仰があって、その皮を剥ぐときに出る粉を入れたものが1つ。もう1つは仏像型になっていて、ある有名な呪術師の骨と、59の霊体を閉じ込めているとされています。
どちらもタイの呪物コレクターがくれたもので、日本で言う“お守り”のような効果があるそうです。タイでは、亡くなったときの未練が強ければ強いほど、マイナスにもプラスにも強烈なパワーが生まれると信じられている。だから、壮絶な最期を遂げた方の遺灰などを使った呪物が多いそうです。
――家の中だけでなく、外でも呪物と共に過ごしているのですね。呪物と過ごすうえで、気をつけていることなどはありますか。
田中 たとえば、おしら様には「目の前で肉や卵を食べてはいけない」という言い伝えがありますし、タイの呪物には「他の呪物と一緒に飾ってはいけない」と言われているものも多い。毎朝呪文やお香が必要なものもあります。
でも、うちには150体以上の呪物があるので、すべての呪物の言い伝えを守るのは難しい。なので、呪文を簡略化する、お香は1つだけ焚くなど、できる範囲で対応させてもらっています。それでも、毎日のルーティンにはかなり時間がかかっていますね。