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呪術師になって呪物たちの思いを受け止められるようになりたい

――呪物の恩恵を感じているからこそ、「いつか自分の身に恐ろしいことが起こる可能性もあるのでは」と考えることはないのでしょうか。

田中 めちゃくちゃありますよ。何度も言っているように、一緒に暮らすのは怖いです。それでも、誰かに譲ろうとか、お焚き上げしようとは全く思わないんですよね。

 本来なら、呪物はお寺に持っていって供養してもらったり、お焚き上げしてもらったりするのが良さそうじゃないですか。でも、僕は「ああやって気持ちを鎮めるのが、本当に彼らのためなのかな」と思ってしまう。

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 きっと呪物には、僕たち人間に訴えたいことがあると思うんです。だから、ポジティブにもネガティブにも強いエネルギーを出して、その存在をアピールしているのかなって。その思いをきちんと受け止めるのが、僕のような呪物コレクターの役目だと思うんですよね。呪物という存在をちゃんと受け止めるのが、彼らの救いになるんじゃないかな、と。

 でも、僕は霊感が全くないから、現状、呪物とのコミュニケーションはほとんど取れていません。それでももっと呪物のことを理解したいから、呪術師になる修行をしたいんですよ。

田中さんが呪物を集めるきっかけになった“いわくつき”の人形「チャーミー」 ©西邑泰和

――霊感がなくても、呪術師になれるのですか。

田中 いくつか方法はあるんですよ。土着信仰の儀式を受けるとか、呪術師に“気”を入れてもらうとか。世界には、“霊力”をあげるための儀式を行っている国があるんです。日本でも、そういった儀式の名残りが各地のお祭りなどに受け継がれていますよね。

 何度もお話ししているように、呪物には生まれた土地の文化や歴史が大きく関わっています。情報を集めて、なぜ呪物が呪物となったのか、僕なりに解釈をするのは楽しい。でも、それだと限界があるんですよね。呪物が何を訴えたいのか、あくまで僕の解釈でしかないんです。

 だから、僕自身が呪術師になって、呪物たちの思いをより受け止められるようになりたい。力をつけて、いつかチャーミーたちと会話ができるようになれば嬉しいですね。

 

撮影=三宅史郎/文藝春秋