1ページ目から読む
3/3ページ目

 もともとドジャースは、岩手・花巻東高時代から大谷獲得に熱心だった。17年オフの渡米時にも獲得を目指したものの、当時のナ・リーグはDH制がなかったこともあり断念。しかしその後も大谷獲得に備えて資金や編成を調整していたようで、FAとなれば満を持して交渉に乗り出すことになる。

18歳の大谷翔平 ©文藝春秋

 ドジャースの10年越しの“オオタニ愛”は実るのか。米球界関係者も「ドジャース有力説」を認めるものの、断言できないのには大谷特有の“ある理由”が関係しているという。

「本命ドジャースで対抗エンゼルスという大方の予想は確かに合理的だ。ただ、オオタニの契約は本当に予測が難しい。日本ハムからメジャーにやってきた2017年も、去年も裏切られている。我々は『大谷ファクター』と呼んでいるんだ」

ADVERTISEMENT

メジャーで「大谷ファクター」と呼ばれる“予測不能性”

 2017年オフ、23歳だった大谷は最低保証年俸の54万5000ドルでエンゼルス入りした。「契約金に制約がなくなる25歳になってから渡米すれば総額2億ドル」と囁かれた中で、最高峰のプロリーグでプレーするためにお金度外視でメジャー移籍を決断した。

エンゼルスのモレノオーナーと ©時事通信社

 さらに昨年も、年俸調停の権利を持っていたにもかかわらず、シーズン中に異例の合意に達した。年俸も3000万ドルと一部予想を下回ったが調停すらせず、ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)挑戦を最優先してスピード決着を目指した。

 このように大谷の契約では、メディアがことごとく予想を外してきた。金銭的な条件だけで決断せず、プレー環境や納得感を優先する価値判断はアメリカ人にとって前代未聞のもので、大谷の決断を予測する困難さは「大谷ファクター」と呼ばれるようになった。

「今回の手術だって、USAトゥデー紙が9月10日までに今季を終了する可能性があると報じたが、実際に出場を断念したのは1週間ほど後だった。手術が控えていても、オオタニはぎりぎりまで復帰を目指していたそうだ。日本ハムや代表チームで監督だった栗山(英樹)さんは彼のことを『あまのじゃく系』と表現したが、本当にその通りだ。だから来季、エンゼルスでもドジャースでもないチームで彼がプレーすることになっても全く驚かない」(同前)

 既成概念を覆した二刀流のプレースタイル同様、今回も常識では考えられない結論が待っているのかもしれない。