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 裁判資料の中には、和威さんが通っていた当時の中学校校長が代理人弁護士に向けてエアガンを発砲する写真も存在する。校長は、エアガンは「撃ち合いごっこ」として使用するもので、目に直接あたるなどしなければケガをしない、皮膚にあたった感覚はオデコをはじく「デコピン」程度と話していたという。

 この資料を読んだA子さんは怒りを隠さない。

「エアガンは人に発砲することすら愚かで、そもそも人に向けていいものではないと私は思います。しかし学校の要にもなる教育者である校長先生が、このように善悪の区別もつかない大人である事実にとても恐ろしさを感じました」

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学校側で裁判で提出した資料写真の1枚。実際にエアガンの弾が当たった時の痛みを実験した、としている。1.5メートルの距離から弁護士の背中に向けて校長が連射したという 佐藤さん提供

 いじめの事実認定も十分でなく、学校側の責任も問われない判決だったが、和威さんは判決後の記者会見では実名を公表し、カメラの前に立って被害を訴える決断をした。

 その後、高裁での控訴審、最高裁の棄却を経て判決は確定したが、和威さんや家族の闘いはまだ終わっていない。

 いじめの発覚から11年後の今年6月、鳥栖市教委が和威さんの事件を「いじめ重大事態」と認定し、調査委員会を設置したのだ。しかし、調査委員会のメンバーに利害関係当事者が含まれるなど、文科省のガイドラインが反映されていない疑いもある。

「調査委には、当時の(支援)委員の3人が入っています。1人は『(いじめの存在に)学校が気づくのは不可能』と言っていました。そうした委員がいるので、本気で向き合ってくれている感じが今のところしません」(和威さん)

「サバイバルゲーム」と称してエアガンで撃たれた神社の境内に立つ和威さん

「真っ赤だね。全部、真っ赤で真っ黒だね」

 第三者委員会の調査はこれから本格化する。

「兄は当時、暴力を受けて倒れたときに真っ赤な彼岸花が見えたそうです。兄が高校1年の秋に、地面から伸びた彼岸花を見て、『真っ赤だね。全部、真っ赤で真っ黒だね』と話す表情にぎょっとしました。今でも兄は(PTSDの症状のために)自分では制御できない行動に苦しんでいます。

 赤い彼岸花には独立、情熱、出会い、悲しい思い出、諦めという花言葉があります。兄にとってこの花が、悲しい思い出、諦めという意味から、情熱や独立を意味するようになる日が来ることを祈っています」(A子さん)