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知的障害の様相が「身勝手で短絡的」に

 さらにいえば、裁判長が判決文で述べた「身勝手で短絡的」に見えてしまうというのも、まさに知的障害の特徴のひとつと考えます。知的障害であれば、先のことを想像して考えるのが苦手なので問題を先送りしたまま現実に直面し、場当たり的な行動に出てしまう可能性もあるのです。

 ほかにも判決文には、

「空港職員等に助けを求めようともしていない」

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「妊娠を隠し続け……これを直視せず、先送りしたまま出産を迎え……」

「問題解決が困難である際に姑息的(一時しのぎ)あるいは強引な行動に至る傾向があり……」

「母親に妊娠の事実を隠すなど……」

 といった内容が書かれていました。困ったときに1人で抱え込んでしまい、融通を効かせて他者に助けを求めることが苦手だというのも、まさに知的障害の特徴のひとつと言えるかもしれません。

「普通の人」として裁かれ、判決が下されることも

 これだけ知的障害の特徴とも解釈できる様相を呈しているのに、知的な問題があるとは受け止められずに、本人の身勝手さ、思慮の浅さばかりが浮き彫りにされてしまったのです。

 これは場合によっては冤罪にもつながりかねない大きな問題だと思っています。

 先日もある県で裁判官向けに境界知能について講演をしたのですが、みなさん、知的障害についてすらあまりご存じではありませんでした。「知的障害ってそもそもどういう状態を指すのですか?」というレベルの方もおられました。「境界知能」であればさらにご存じない方も多いはずです。そんな裁判官の方々が、被告人がおぼつかない言動をとり質問に適切に答えられない様子を見せても、知的な問題を疑うのは難しいと思いました。 

 知的障害があったとしても、気づかれずに「普通の人」として裁かれ、判決が下されることもあるわけです。これは恐ろしいことだと思います。