Jリーグの名物企画屋が2020年に控える東京オリンピック・パラリンピックのPRに挑んだら……。
あるときは爆音を立ててトラックを走らせるフォーミュラカーショー、あるときは南極、宇宙とスタジアムを結ぶ生交信、あるときは動物と触れ合う移動牧場……。「ワクワクとドキドキ」をモットーに川崎フロンターレのホーム試合開催日にスタジアム内外でオリジナル企画を展開してきた天野春果は昨年、クラブから東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会に出向した。
その天野が主導する企画の第一弾が、3月5日に発表された。
日本を代表するクリエイター、イノベーターが大会を盛り上げる活動「ONE TEAM PROJECT」の一環としてJAXA(宇宙航空研究開発機構)、人気漫画「宇宙兄弟」とのコラボレーションを実現。金井宣茂宇宙飛行士が無重力のISS(国際宇宙ステーション)内にて「東京2020応援パラパラ漫画」をパラパラさせることに挑戦するという。フロンターレで培った「ドキドキとワクワク」を世界規模、いや宇宙規模で広げようとしている。
なぜ宇宙でパラパラ漫画なの?
3月上旬、都内にある組織委員会が入ったビルで天野はせわしなく動いていた。パラパラ漫画企画の発表直後とあって、最終的な準備に追われていた。
企画の概要を簡単に説明すれば、こうだ。「宇宙兄弟」の作者・小山宙哉さんが制作したパラパラ漫画を、無重力状態の宇宙でもパラパラと読めるのか実証実験するというもの。「宇宙兄弟」主人公のムッタが月面で月面宙返りをするというシーンが描かれている。これに合わせてボクシングの村田諒太、競泳の入江陵介、「宙ガール」として知られるタレントの篠原ともえ、Jリーグからは昨季MVPの小林悠ら多くの著名人が登場して、結果を予想するキャンペーンを張っている。
なぜ宇宙でパラパラ漫画なの?
率直に尋ねると「面白いと思うんですよね。だってJAXAのみなさんもどうだろうねえといって即答しなかったですから」。40代中盤のオジサンが、星のようにキラキラした目を向けてくる。
この企画は天野が組織委員会に入ってすぐに動き始めた。JAXAと「宇宙兄弟」のコラボはフロンターレで一度実現しており、ノウハウがあったのも大きかった。「ONE TEAM PROJECT」の活動として組織委員会の同意を得ると、早速、JAXAと小山氏側に打診することになった。そのときはまだ「パラパラ漫画」の発想はなかったという。
「小山先生には全然違うコンセプトで『絵を描いてもらえませんか』とお願いしたんですけど、自分のなかで“これ、本当に面白い企画なのかな”って疑問に感じたんです。“俺、面白いことやろうとしているか”って」