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組織委員会に足りない3つのもの

 天野はパラパラ漫画と併行してもう1つの企画を実現させている。フロンターレでも取り組んだ算数ドリルの制作だ。算数の問題を解きつつ、オリンピック・パラリンピックの競技を学べる内容。子供たちがサクサクと勉強を楽しめる。3月より東京・渋谷区内の公立小学校全18校の6年生で活用されることになった。

 全競技を紹介するために、問題を出す先生方にはオリンピック競技を自ら勉強してもらったという。また企画に参加してくれた15人のオリンピアンは無償で協力してくれている。

 パラパラ漫画も算数ドリルも、ほぼ1年かけて発表にこじつけた企画。決して平たんな道のりではなかった。

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“Parapara MANGA”の文字も ©文藝春秋

「東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会って、実は3つのものが足りないんです。カネない、時間ない、人いない。2年後の大会に向けて、お金をかけない企画でいろいろとやっていかなきゃいけないのに、何か物事をスピーディーに決めたくても想像よりも多くのステークホルダーがいて、様々な関係者との確認作業、了承を取る作業に多くの時間を費やさなければなりませんから。その点は、フロンターレのような小さな組織でやるのとは全然違ってきます。思うようなスピードで進んでいかないこともあって、本当に実現できるのかずっと不安でした」

 不眠症になり、「今までできたことのない」口内炎もできた。それでも善意で協力してくれる周りが「面白がってくれること」が心の拠りどころになった。

 何より励みになったのが、出向元である川崎フロンターレが12月2日のリーグ最終節で逆転優勝を果たしたこと。天野は等々力競技場でサポーターの輪に入って、声を枯らして応援した。ワクワクドキドキの予定不調和がそこに広がっていた。フロンターレの優勝が、奮い立たせてくれた。

「予定不調和」の先にある「面白い」

©文藝春秋

 天野自身、反響を楽しみにしている。

 算数ドリルについては来年度、全国展開を視野に入れている。そしてパラパラ漫画は、20日に組織委員会公式WEBサイトとJAXA YouTubeチャンネルなどで結果が公開される。既に、実験の収録は終えているそうだ。

《【動画】宇宙でパラパラ漫画は動くのか!? ONE TEAM PROJECT「宇宙から東京2020エール」》
https://participation.tokyo2020.jp/jp/oneteam/07_01.html

 攻めの企画は、はじまりに過ぎない。

「組織委員会の仕事自体が予定不調和なんで不安もありますけど、楽しんでやらせてもらっています。パラパラ漫画と算数ドリルの次にやることも、既に動いています。みなさんの記憶に残るようなものになればいいなと思っています」

 パラパラとサクサクの裏にある、ワクワクとドキドキ。

 予定不調和の先に、東京オリンピック・パラリンピックを広める「面白い企画」がある。

東京五輪は2020年7月24日に開幕する ©iStock.com