さわやかでまっすぐなジャニーズの歌唱
ダンスについて言うと、これは『ジャニ研!』の共著者である大谷能生さんが分析しているんですが、ジャニーズの人はステージの立ち居振舞いひとつとっても、頭の位置をずらさないで歩くといった、モダンバレエ由来の動きができるんですよ。それはミュージカルなど舞台芸術の基礎教養だったわけですが、それが綿々と受け継がれていて、少年隊からKing&Princeまでみんなできる。
キンプリは最初からバレエ要素が強く入っている印象で、「シンデレラガール」を聴いたときには、久しぶりにジャニーズの正統的なラインが出てきたなと思いました。なにわ男子もそうですけれど、テレビでバラエティ的なタレントとしてのキャラクターを出していても、ステージになるとビシッと揃う。そのギャップは驚きです。大谷さんも、テレビ的な動きとステージ的な動きがすっとスイッチできるのがジャニーズのすごいところと指摘しています。
僕はボーカルについてはあまり気がいかないタチなのですが、歌がうまい人とうまくない人が適度に散らばっていますよね。以前対談した近田春夫さんは、ジャニーズでは歌がうまい人もそうでない人も、小学校の合唱のようにすごくさわやかにまっすぐ歌ってて、あまりそれぞれのクセを出さないのだと言っていました。そういう素朴な歌い方の彼らが、きらびやかな衣装で、華やかなダンスのミュージカル的なステージパフォーマンスを、プロフェッショナルとして繰り広げる。
これはやっぱりジャニー喜多川氏の作り上げた独特な世界観で、その点に関しては唯一無二だと思います。
ジャニーズを文化として評価することに意義があると思っていた
そういうジャニーズの伝統的な流れがあって、90年代に普段着のクラブ・カルチャー的な魅力を体現したSMAPが飛び出してくるわけです。
そんな風に、ジャニーズという存在を文化論的に語ることはできるし、文化として評価することに大いに意義があるんだと思っていたところに、『ジャニ研!』の企画が持ち上がって、結果的に僕の物書きとしてのデビュー作になりました。
自分の本の中では、これまで多少言及しているものの、はっきりとは性加害問題について追及していません。もちろん僕も、それまで出ていた北公次さんや平本淳也さんの告発の存在は知っていました。ネット上にもジャニーズ事務所をめぐる様々な噂があふれていました。ただ、自分としてはむしろ、そういうジャニーズ事務所への語られ方に対抗するように、真正面から戦後日本文化の中に位置づけてやろうというスタンスでした。
ところが、2016年にSMAPの解散問題が持ち上がり、例の『SMAP×SMAP』での公開謝罪があったわけです。あの放送には少なからずショックを受けました。