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「今のたけしさんがあるのは、この人がいたから」俳優・山本耕史(46)が語る、ビートたけしの“ルーツ”となった人物

山本耕史(俳優)――クローズアップ

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 ビートたけしこと北野武による青春自伝小説『浅草キッド』が、このたび初の舞台化。音楽劇として上演される(脚本・演出:福原充則)。

 主演の北野武役は、林遣都さん。そして、武の師匠である幻の浅草芸人・深見千三郎を、舞台経験豊富な俳優、山本耕史さんが演じる。

山本耕史さん

「あのたけしさんの師匠役ということで、プレッシャーはあります。ただ、青年時代とはいえ、全日本国民、それどころか世界中の人たちが知っている方を演じる遣都君に比べれば、いくらか気は楽ですね(笑)。残念ながら深見さんは映像資料などが全く残っていない方だそうなので……。とはいえ、当時、浅草にこの人ありと言われたほどの芸人さん。説得力が出るよう、力を尽くしたいと思います」

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 ところで、『浅草キッド』は、これまでに三度、映像作品化されている。特に2021年のNetflixによる映画のヒットは記憶に新しいが――。

「むしろ、非常に舞台向きの作品ですよ。そもそも、フランス座という劇場のお話ですから。その分、やることは多いですけどね。お芝居をして歌って踊ってコントして。もちろん、タップダンスも。これが思った以上のスピードで(笑)。挑戦のしがいがあります」

 と、山本さん。さらに初共演となる林さんについては、嬉しそうにこう語る。

「稽古中の遣都君を見ていると、姿形や声は全然違うのに、また仕草や話し方をいわゆるモノマネ的にやるわけでもないのに、もう“武”にしか見えないんですよ。たたずまいや存在感、なのかなあ。おかげで想像以上にいい舞台になりそうですし、彼の代表作にもなる予感がしています」

 一方、自身が演じる深見役については、

「つくづく、今のたけしさんがあるのは、深見さんがいたからなんだと思うようになりました。芸への一途な思いや熱っぽさ、仲間や後輩芸人たちに対する情の深さなど、たけしさんを見て憧れる要素は、すべて深見さんにルーツがあるんです。そう考えると、僕が演じる深見さんは“武”以上にたけしさんっぽくてもいいのかもしれない。その知られざる孤独や悲しい最期まで、しっかり演じたいと思います」

 時は1972年。流行りの大学闘争にものれず、サラリーマンにもなりきれず、やぶれかぶれの武は、ムード歌謡が流れ、ケバケバしいネオンサインが彩る街・浅草にたどり着く。そこで、人生を変える存在と出会うのだ。

「当然、僕はリアルでは知らない時代ですが、以前、ドラマで植木等さんの役を演じたこともあって、なんとなく、この時代独特の空気感は掴んでいます。なぜか懐かしいと感じる昭和の音や景色。本作ではそれを丁寧に再現しています。とは言っても、僕はこのお芝居を過去の時代のアーカイブにしたいとは思っていません。やっぱり、今の時代を生きるお客さんに向けてのエンターテインメントでありたい。笑って泣いてこその舞台。ぞんぶんに味わって欲しいですね」

やまもとこうじ/1976年生まれ、東京都出身。87年、ミュージカル『レ・ミゼラブル』のガブローシュ役で舞台デビュー。以来、舞台を中心に、ドラマ、映画、CMなどで活躍。主役はもちろん、大河ドラマ『新選組!』(2004)では土方歳三、『真田丸』(16)では石田三成、『鎌倉殿の13人』(22)では三浦義村など物語のキーマンとなる人物の好演に定評がある。

INFORMATION

音楽劇『浅草キッド』
10月8日~22日、東京・明治座にて。その後、大阪、愛知で公演予定
https://www.ktv.jp/asakusakid/

「今のたけしさんがあるのは、この人がいたから」俳優・山本耕史(46)が語る、ビートたけしの“ルーツ”となった人物

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