きょう2月2日はお笑い芸人の劇団ひとり(本名・川島省吾)の45歳の誕生日である。昨年の東京オリンピックでは、開会式で流れた映像でコントを演じたのが記憶に新しい。さらに12月には、彼の脚本・監督による映画『浅草キッド』がNetflixで公開され、反響を呼んでいる。原作は、ビートたけしが自身の浅草での芸人修業時代をつづった同名小説である。
たけしに憧れ、高校時代に『天才・たけしの元気が出るテレビ!!』の一企画「お笑い甲子園」への出演を機にデビューした彼にとって『浅草キッド』は特別な本だ。それだけに《もしも今後、自分以外の人が『浅草キッド』を映画化したら悔やんでも悔やみきれない》と、監督第1作の『青天の霹靂』(2014年)を撮った直後から脚本を書き始め、あちこちに企画を持ち込んだ末、ようやく制作が決まったという(『キネマ旬報』2022年1月上・下旬合併号)。
深夜番組で「なりきりぶり」を発揮
映画の劇中でのたけし(演じるのは柳楽優弥)とその師匠・深見千三郎(同・大泉洋)によるボケとツッコミの応酬は、その間といい、やはり本業の芸人の演出ならではと思わせる。
初舞台で緊張するたけしに深見がダメ出ししながら笑いを生み出していくさまなどは、たけしより前に深見に師事した萩本欽一を彷彿させた。それもそのはずで、ひとりは『浅草キッド』の準備中、バラエティ番組『欽ちゃんのアドリブで笑(ショー)』で萩本とコントを演じる機会に恵まれ、ダメ出しの洗礼を受けるとともに、共演にかこつけて何度もインタビューしたという。