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初デートはハチ公前で待ち合わせ

「初デートの待ち合わせは渋谷のハチ公前でした。横浜の山下公園まで向かうと、ベンチに座って他愛もない話題で盛り上がって、一緒に食事をし、夜には彼女を東横線の沿線にあった自宅まで送り届けて。山下公園の散歩はデートの定番になっていきました」(貴乃花)

A子さんと顔を寄せ合う(貴乃花氏提供)

 一方、土俵に立つ貴乃花は、次々と最年少記録を塗り替え、番付を駆け上がった。世間はもはや彼がただの二世力士ではないと気づき、兄の花田虎上氏(後の横綱・三代目若乃花)を交えた空前の“若貴ブーム”が到来しようとしていた。

 迎えた1991年五月場所。18歳9カ月の貴乃花は、初対戦した大横綱・千代の富士を破り、最年少で金星を獲得する。この場所で千代の富士が引退を決め、劇的な世代交代を印象付けると、ついに“若貴ブーム”が本格化。

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 相撲の枠を超えた狂騒が貴乃花を覆い始める。そんな時代のことだった。

貴乃花氏提供

「相撲に専念したい」と突然の別れ

「ある日、光ちゃんが『別れよう』と切り出してきました。突然だったので、最初は好きな人ができたのかな、と思いましたが、『俺はどうしても親父と同じ大関になりたい。相撲に専念したいんだ』と。悲しかったですが、人の気持ちの問題ですから、どうすることもできなくて……」(A子さん)

 貴乃花は、当時の心境をこう明かす。

「彼女とはいずれ一緒に家庭を持ちたいと考えていました。付き合い始めた当初から『花田A子』と書いて、手紙を渡したりしていましたし。ただ、怪我をすれば一瞬で潰れる世界です。彼女と一緒になる前に、自分にはまだまだ周囲を説得できるだけの実績も実力も備わっていないと考えるようになりました。総じて、私の力不足だったと思います」