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――女性の中でも、ニッチな層に向けた作品群なんですね。

服部 そうですね。「女性向けAV」が「女性全体」という大きな主語の性のあり方を決めてしまうことには、僕はとても批判的です。

女性向けAVの「2つの功績」とは

──それでも、女性向けAVによって救われた女性もいるのでしょうか。

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服部 ええ。僕は、女性向けAVが果たした役割は大きく2つあると思っています。

 まず、女性向けAVをきっかけに、「セックスを前向きに、肯定的に捉えられるようになれてよかった」と語る女性はいます。たとえば、「セックスについては保健体育の授業ぐらいの知識しかなかったけど、女性向けAVを見て、セックスを好きになれた」「SILK LABOから見始めて、そのうち男性向けAVも見るようになった」など。

服部恵典氏 Ⓒ今井知佑/文藝春秋

──女性向けAVをきっかけに、男性向けAVを見る人がいる?

服部 ある女性は一徹さんのファンになって過去作を見ていくうちに、彼が昔出ていた男性向けAVも見るようになりました。そこからさらに、「この監督の作品も面白い」「この女優さん、すごくかわいい」と興味を広げていく。このように、男性向けAVの面白さに目覚める方もいるんです。

──SILK LABOが、AVという大海の入口になっているんですね。

服部 「男」の荒波に揉まれなきゃいけない苦しさは指摘しておきますが、「女性向け」じゃない自分の性を探しに行けるわけです。

 そして、もうひとつの役割は、「男性を撮る」ことを意識的に始めたことです。異性愛の男性向けAVは、「男性をエロティックに撮る」ことをほとんどやってきませんでした。これだけ膨大な男性向けAVがあるのに「陰部を舌で責めている男性を女性視点で撮る」という映像は、男性向けAVにはつくり出せなかったわけですから。

 ですから、撮影技法として「セックスする男性を魅力的に撮る」ことを確立したのは、AVの歴史に残る貢献だと思います。