「女性向けAV」は、既存の男性向けAVと何が違うのだろうか。女性向けAV研究で東大大学院の博士課程を修了した、気鋭の研究者インタビュー第2弾。

 今回は、女性に人気のAV男優と女優、女性向けならではの独特なタイトルセンス、さらに「男性向けAVを切り抜いて女性向けAVを量産する」という、新しい動画制作テクニックについて聞いた。(全4回の2回目/続きを読む)

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服部恵典氏 Ⓒ今井知佑/文藝春秋

女性向けAVが成長したのは“一徹さん”のおかげ

──女性向けAVの特徴として、「男優がイケメン」というのもあるそうですね。

服部 間違いなく、みんなイケメンです。《女性が見たい男性》を撮るのが目的なので。SILK LABOでは男優を「エロメン」、GIRL’S CH(ガールズ シーエッチ)という、ソフト・オン・デマンドの女性向けAV動画サイトでは「ラブメン」と呼んでいます。

SILK LABOの男優紹介ページには「EROMEN」の文字が見える(SILK LABOサイトより)

──では、体もすごくマッチョだったり?

服部 いえ、ボディビルダーのように極端なスタイルの男優はいないです。エロメンの応募要項にも「痩せすぎでなく、太りすぎでもない普通体型。または細マッチョ系」とあります。

──「カッコいい男性を撮る」ことが重要な女性向けAVでは、どんな男優が人気なのでしょう。

服部 女性向けAV界には、一徹(いってつ)さんという大スターがいました。彼はもともと男性向けAVの男優だったんですが、2008年に女性向けAVに進出して、2012年からSILK LABO専属になったんです。女性向けAVがひとつの市場をつくれたのは、彼の存在が非常に大きいと思います。

鈴木一徹氏 ©文藝春秋

──男優としての一徹さんの魅力は、どんなところですか。

服部 僕は、女性向けAVを視聴するファンの方々にインタビュー調査をしてきましたが、一徹さんの魅力のひとつは「包容力」だと思います。