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 面談中に感情が高ぶって泣いてしまうこともあった。また、正義感が強い面があるため、おかしいと思ったら誰の前でも「これはおかしい」と言ってしまうことから、空気が読めない存在として扱われてしまった。これはADHDの衝動性とASDの疑問に思ったことを突き止めようとこだわる特性が作用しているように考えられる。

会社を実質クビに

 なかなかうまくいかず、労働時間も長く、辞めたい気持ちが募っていく。感情のコントロールができずにつらくて泣いてしまうことが増えていった。

 このとき石川さんはADHDを疑い、医療機関を受診する。鬱傾向も出ていたため、鬱状態のせいでミスが多いのか、ADHDのせいでミスが多いのかを確かめたい気持ちもあったという。診察の結果、ADHDの診断が降りた。

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 発達障害の診断が降りると「ほっとした」「納得がいった」と感じる当事者も多い中、石川さんは「自分はみんなと違うのだ」とショックを受けたと語っている。彼女は、自分が他の人と違うこと、マイノリティであることをネガティブに捉えていたようだ。

 彼女が勤めていた会社では芳しくない成績の社員は指導対象となり、次の評定時に再度悪い成績を取ると、指導を続けるか半年後に契約を終えるかを決める査定を受けることになっていた。結局のところ、石川さんは2年弱で実質的にクビになってしまうこととなる。ミスの連発が失職を招いてしまったのだ。

言われないと行動ができない

 2社目の会社もASDの特性を活かせるコンサル業を選んだ。人事系の課題解決を得意とするファームだ。

「でも、ここでもミスが多いのと、言われないと行動できませんでした。推測ができないんです。例えば、会議が決まったら会議室を予約するとか、そういう基本的なことができない。『会議室取っておいてね』と言われればできるのですが、次回また会議が決まったときに会議室を取ることができませんでした。

 今回は『会議室取ってね』と言われなかったから取らなくてもいいんだろうと思ってしまうんです。他にも、別の人が話している最中につい被せて話してしまって、気を付けないといけないと思うことがありました」