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 現在、石川さんはADHDの症状を改善する薬であるストラテラとコンサータを飲んでいる。薬を飲み始めてから多少落ち着きが見られ、疲れやすさもなくなった。それまではコントロールができない霧の中でジェットコースターに乗っているような感覚だったのが、霧が晴れてスピードも調整できる車に乗っているような感覚に変わったという。しかし、やはりケアレスミスは時折やってしまう。

「在宅勤務でようやくみんなと同じ位置に立てた」

 仕事の方は現在出向中だ。ADHDであることを上司にカミングアウトすると「改善の余地はあるの?」と言われた。発達障害は治ることはないが、薬で若干特性が抑えられたり、ライフハックなど工夫をすればうまく適応することはできる。だが、認知度が上がっているとはいえ、まだまだ知らない人は知らない。結果として出向先に飛ばされてしまったのだ。また、コロナ禍であるため在宅勤務となっている。

「出向したタイミングが新型コロナウイルスの流行りだしたタイミングだったので、出向先の人と対面で会ったことがほとんどないんです。だから、人間関係が築きづらいところがあります。あと、これは発達障害に限らないと思うのですが、在宅勤務だと誰かに見られている緊張感がないのでオン・オフの切り替えが難しく、グズグズと遊んでしまうこともあって……。

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 でも、在宅勤務のメリットもあります。対面の仕事だと空気を読んで動かないといけないところがありますが、リモートだとチャットなどで明文化したコミュニケーションが取られます。それが私からすると、ようやくみんなと同じ位置に立てた感じがして、ありがたいです」

 発達障害の人、特にASD傾向の強い人はマニュアルがあると仕事をしやすいと言われている。ASDがある知人は、いろいろな仕事を転々としてきたが、一番長く続いたのが、完璧にマニュアル化されているマクドナルドでのアルバイトだったそうだ。つまり、文字にして視覚化することで、発達障害傾向のある人は次にやるべき仕事にスムーズに取り組めるのだ。