よしなが 確かに。主人公のオスカルは男装の麗人ですし。宝塚で『ベルばら』が繰り返し演じられるほど人気である理由の一つが、男役のトップ同士のラブシーンが見られる数少ない演目だから、なんだそうです。
ただ私は、最初に読んだのが小1、小2の頃。なので、いちばんよく覚えているのは、ルイ15世が天然痘に罹った場面。恐ろしくて、楳図かずお先生と同じカテゴリーで「怖っ!」(笑)。
岡村 楳図さんの漫画、怖かったですよね。僕も子供の頃に『洗礼』を読んで震え上がりました。
よしなが 小学生ってそうですよね。怖い漫画の流行が周期的にやって来て、楳図先生の漫画を持ってる子がクラスに絶対1人はいるから貸してくれる。みんなでヒ~ッてなりながら『洗礼』とか『おみっちゃんが今夜もやってくる』とかを読んでましたから(笑)。
「真壁くんカッコいい」がわからず…男女の恋愛が刺さらない
岡村 そして、大学生のときに『SLAM DUNK』をネタにしたBL漫画を同人誌で出すようになり、漫画家人生が始まったと。そもそもなぜBLなんですか?
よしなが BLが好きというより、「ボーイミーツガール」にハマれなかったんです。例えば、私が小学生のときに『ときめきトゥナイト』がめっちゃ流行ったんです。もちろん読んでましたし大好きでした。でも、「真壁くんかっこいい!」ってみんな言うんですが、私にはその気持ちがわからなかった。『ホットロード』もそう。「春山かっこいい!」がわからない。
結局、刺さるのは、男女の恋愛ではなく、「それ以外」。それ以外はBLだったりもしますが、親子関係が実は大きくて。『日出処の天子』もそうなんです。
岡村 聖徳太子とその母の。
よしなが そう。お母さんは弟ばかりかわいがり、優秀な長男を愛さない。しかも、彼が超能力を使うところを見てしまい、「この子は尋常ではない」と怖れてしまう。ですから、母に愛されなかった子の話でもあって。母の愛を得られなかったというその一点が厩戸の心に大きな穴を作り、それを埋めるために蘇我毛人を好きになる。
岡村 深いですね。
よしなが BLの祖ともいわれる竹宮惠子先生の『風と木の詩』もそうで、父と子の話なんです。主人公のジルベールが、自分の愛人だと思っていたオーギュストが実は父親だったとわかるという、めちゃくちゃ業の深い話なんです。
私は、山岸先生、萩尾先生、竹宮先生、大島弓子先生など「24年組」(注:昭和24年前後生まれの女性漫画家たち)の先生方がお描きになった作品が大好きなんですが、それらは恋愛ものとして楽しむだけじゃなく、家族の話であることも大きいんです。