よしなが 誰かに勧められて?
岡村 高校を卒業して上京したばかりの頃、美大を卒業した方々がルームシェアしてた部屋によく出入りしてたんです。そのときに、「山岸凉子と萩尾望都は絶対に読め」と言われたのがキッカケで。
よしなが 萩尾先生も!
岡村 はい。『ポーの一族』を読みました。それまで少女漫画というと妹が愛読していた『りぼん』で胸キュンの世界だったんで、こんなに知的で成熟した漫画があるのかと。少女漫画はここまで進化しているのかと。衝撃でした。
よしなが ただ、私は『日出処の天子』に出合ったのは小学生のときだったので、岡村さんほど深いところはわからず、蘇我毛人と厩戸王子が早くチューをしないかなと思いながら読んでました(笑)。
親戚の家を渡り歩き…よしながふみの“原点”
岡村 よしながさんは東京生まれの東京育ち。ひとりっ子で両親が共働きで、小さい頃は祖父母や親戚に囲まれて育ったそうですね。そういった環境は自身の人格形成に大きく作用したと思いますか?
よしなが どうだろう。「食」という意味では大きかったかもしれません。いろんなお家の家庭料理をいろいろと味わいましたから。
岡村 『きのう何食べた?』はゲイのカップルが紡ぐ日々の話であり、そんな彼らがつくる日々の家庭料理の漫画でもあるわけですが、その大本がそこで培われた?
よしなが だと思います。とにかく食べることが好き。世話になることに負い目を感じないほど小さかったですし、当然のこととして親戚の家を渡り歩いて(笑)。
岡村 相当かわいがられて。
よしなが 小さい子供が私だけだった、というのもあります。当時は曾祖母まで居たんですが、曾祖母にとっても初曾孫だったし、父と母、両方の祖父母にとっても初孫。ほかに、大叔父や大叔母もいましたが、そこには孫が生まれておらず、叔父や叔母も結婚しておらず、そういう状態だったので、小っちゃい子供は私1人。
だから、私が来るとワーッといって何か食べさせる、みたいな(笑)。しかも、母の従姉妹の家に行くと漫画がどっさりあって。それこそ萩尾先生の漫画もそこで読みました。
岡村 親戚の家ってなぜか漫画がたくさんあるんですよね(笑)。
よしなが そう、読み放題(笑)。だから、年のわりに早く萩尾先生の漫画を読んだんです。手塚治虫先生の『火の鳥』も読みましたし。
岡村 小学生の頃、最初にハマったのは『ベルサイユのばら』(池田理代子作)だったそうですね。僕からすれば、あの漫画もBLで、耽美な感じがするんです。