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児島 例えばキングオブコントを1回戦で落ちた人の単独ライブって、観に行きたくないじゃないですか。1回戦で落ちて悔しがっているんだけど、「今度、単独来てください!」って告知している。それって違うと思うんですね。

 私たちは所属に対して、「単独ライブをやりたいんだったら、無理に賞レースは出なくていいよ」とも伝えています。今のところキングオブコントは芸歴制限がないですから、ある程度力がついて、「あいつらが出たら優勝するんじゃないか」みたいな雰囲気ができたら出ればいい。単独ライブができるくらいまでネタを磨いた方が、結果的に力もつくと思います。

 とは言え、私たち自身、常に勉強中の身だと思っているんです。いろいろな芸人さんと出会って、芸人さんから学んできたことってたくさんあります。新しい芸人さんから教わることだってあるはず。キャリア問わず、超若手であっても「何でも言って」と伝えています(笑)。それがK-PROの強みになると思っているので。

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©文藝春秋

お笑い業界の「これから」

――コロナ禍を機にライブ配信が定着化しました。売れる、人気者になるまでの構造も変わってくるのではないかと思います。「これから」を見据えたとき、児島さんはどうお考えですか?

児島 「テレビに出る=売れる」ではない時代が絶対に来ると思っています。その中で配信サービスも大きな役割を担うと思うのですが、吉本さんの配信はおそらく日常的にテレビを見るような感覚で見ているファンが多いのではないかなって。半面、他事務所は人気者を追うためのツールとしての配信、という位置づけになるのではないかと思っています。

 また、知ってもらう機会というか、きっかけ作りとしての配信という位置づけもあると思います。実際、K-PROの配信を見て、「夏休みなので劇場に初めて来ました」という地方のお客さんも多かったです。一概に配信といっても、もっと多角的な配信サービスが展開されていくと思いますね。

――それこそK-PROが多様なライブを企画したように、人によって楽しみ方が変わる配信が増えそうですね。

児島 ライブで人を集められる、チケットがきちんと売れる芸人さんが地方で単独をするようになったとき、「昔、配信で見てました」というようなお客さんとのつながりを作れたらいいなって思っています。

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 ただ、どこでも見られるという意味では配信は利便性が高いのですが、やっぱり芸人さんに聞くと、「テレビに出たい」と言うんですよ。親を安心させたい、地元の友だちに自慢したい。それってテレビだけが持つパワーなんですよね。ですから、テレビが盛り上がることもとても大切なことだと思います。K-PROとしては、きちんとバラエティにも対応できるような若手をのびのびと育てていきたいです。その上で、ちゃんと舞台にも戻ってきてくれる芸人さんが理想的(笑)。

 ボキャブラブームをきっかけにお笑いが好きになった私もそうですけど、お笑いブームって“テレビきっかけ”なんですよね。だからライブシーンからもムーヴメントを起こさなきゃいけないと思いつつ、これを一過性のブームにしてはいけない、テレビに元気がないという状況でも舞台をブームで終わらせたくない。テレビからブームが生まれて、負けじとライブも盛り上がる。そうした構図ができることが望ましいと思いますね。