ブレイクする芸人の条件
――約20年にわたってお笑いライブを手掛けてきた児島さんは、無名だった若手が人気者になるまでを見ています。売れる人に、共通項などはあるのでしょうか?
児島 共通することは、何というか笑顔で引っ張ってくれたり、空気を変える力を持っていたりする人は売れるのではないかと、私は信じていて。
でも、ブレイクの雰囲気って、芸人さんのほうが噂は速いんですよね。芸人さんが、「あいつ、今日は何のネタやるんだろう」と言いながら舞台袖に集まってくるような人は、売れる前兆ですね。オードリーさん、バイきんぐさんもそうでしたし、テレビに見つかる前の四千頭身も芸人さんが袖に集まり出していましたね。
――2018年からK-PROは所属芸人を持つようになりました。なぜ、自分たちで?
児島 『ゴッドタン』をはじめ、いろいろな番組から「面白い若手はいないですか」「とがってる若手はいませんか」といった問い合わせをもらうことが多かったので、周りから「所属を取ればいいのに」ってよく言われていたんですよ。やっぱりライブを中心に活動しているからこそ、自分たちが育成した芸人が賞レースで優勝して凱旋する――ライブに戻ってきて、さらに盛り上げてくれるような芸人がいたらいいなと思って、所属を取るようにしました。
あと、ライブを開催するために常に他の事務所から芸人さんをお借りしている私たちからすると、テレビで売れてしまうと、ライブでネタをしなくなってしまうのがさびしいんですよね。マネージャーさんの意向で、どうしてもテレビ優先になってしまうことが何度もあって。この子たちはネタが面白いのにもったいないって思っちゃうんです(苦笑)。だったら、自分たちのライブを盛り上げるためにも、人気が出てからも継続的にライブに出演する所属芸人を育てられればいいなと。
――とは言え、児島さんが自分の事務所の子たちに肩入れするのでは……と、心配する芸人も多いような気がします。
児島 あいさつの仕方から教えて、出演者にあいさつ回りをうながしていた私の姿を見て、井口くんから「ちょっと過保護すぎるんじゃないの!?」って言われましたね(笑)。
若手芸人の諭し方
――「お笑い界の母」というか、もう保護者じゃないですか(笑)。
児島 私が所属芸人に付きっきりになってしまうんじゃないかって思われがちですけど、そんなことはなくて、所属芸人もそれは理解しています。むしろ、他事務所の芸人さんよりも厳しいです。うちに所属している若手が「芸歴が一緒のあの子がライブに出られるのに、何で自分たちは出られないんですか?」って食って掛かってきたことがあったんですね。そのとき私は「小さい視野で見ずに、お笑い界全体を俯瞰して見なさい」と伝えました。
同期の一番面白い人をトップに見立ててピラミッドを考えたら、「なんで自分は出られないんだ?」となるけど、お笑い界のピラミッドで見たらどうなるか。さんまさんやダウンタウンさんがトップで、その子たちは否応なしにものすごく下にいるわけです。自分がライバルだと思っている同期も同じ場所にいるんですよ。「じゃあ、そんなこと言わずに頑張りなさい」と言ったら、納得して帰っていきました。めちゃくちゃ言いくるめています(笑)。
――ぐうの音も出ないです(笑)。その他にも、お笑い界を生き抜くための戦略的なアドバイスをしているのでしょうか。