著者は吉本興業の前会長。マネージャー時代にダウンタウンの笑いに衝撃を受け、彼らをメインにしたバラエティ番組『4時ですよ~だ』をプロデュースし、燻っていたコンビをブレイクに導く。ふたりが関西から東京に進出したのちも、松本人志の著書『遺書』や、浜田雅功が歌う「WOW WAR TONIGHT 時には起こせよムーヴメント」などを仕掛け、さらなる躍進を牽引。その後、吉本が60年続いた上場を廃止する節目で社長を務め、会長就任直後には「闇営業問題」に対応した。
しかし本書の内容は、そうした派手な来歴の印象を裏切るもの。〈孤独を見つめすぎない〉〈競争しようとしない〉〈みんなにわかってもらおうとしない〉といった、12項目の〈しないこと〉を挙げ、映像が思い浮かぶような表現で、人の“居場所”についての考えを静かに語りかけている。
「著者は人の居場所を作る天才です。でも照れ屋で、ご自分から功績を誇ったりはしません。凄まじい努力や我慢もしてきたはずなのに、苦労も進んで語らない。そうした控えめで、少しゆるくて、どこか陰を感じさせる人となりをそのまま本にしました」(担当編集者の黒川精一さん)
刊行当初はダウンタウン世代の40代以上が主な読者層だったが、20代に支持が広がりつつあるのは、そのソフトさゆえだろうか。