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  会見では、東山氏と井ノ原氏の“役割分担”も気になった。ビジネスライクな内容は東山氏が説明し、視聴者の感情に訴える内容の時は井ノ原氏が進んで口を開く。

  会見を欠席した藤山ジュリー景子前社長が文書で寄せたメッセージも井ノ原氏が代読した。普通なら後任の東山氏が読むべきものではないかと感じたが、その内容を聞いて、井ノ原氏が読み上げた理由がわかった。

 ジュリー氏の手紙に綴られていたのは、被害者へのお詫びと、叔父であるジャニー氏や母であるメリー氏の事や事務所との関わり、そして自身の病気というセンシティブな内容だったからだ。

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 読む人や読み方によって聞き手の受け止め方が変わりうる内容だけに、表情豊かで穏やかな口調の井ノ原氏が読むことになったのだろう。

ジャニー喜多川氏

ジュリー氏の手紙を東山社長が読まなかった理由

 会見で見せていた井ノ原氏の表情は、いつも申し訳なさそうで寂しそうだ。

 その表情と柔らかい口調でスルーしてしまいそうになるが、もしこの手紙を景子氏本人が読み上げていたら、いま以上の非難を受けることは免れなかったと思う。

 さらに自らの立場を「加害者の親族として」と表すことで、自分自身が被害を与えた当事者企業のトップというより、巻き込まれてしまった「加害者の親族」という立ち位置にいることを示した。

前回の記者会見に登場した時の藤島ジュリー氏 ©文藝春秋

 通常の謝罪会見であれば、たとえ過去の問題について全く責任がない就任したばかりの経営トップだとしても、「自分も被害者」だと匂わせるようなことはしない。非難を浴びることが明らかだからだ。そこで今回は、非難を和らげるために、経営陣というよりタレントの印象が強い井ノ原氏が、感情に訴えるように読む必要があったのだ。