2018年3月10日。好天に誘われるように高崎へ向かった。今日は高崎と横川を結ぶ快速列車「ELレトロ碓氷」「SLレトロ碓氷」の運転日だ。信越本線の横川駅には蒸気機関車の転車台がないので、SL碓氷を運転するときは行きか帰りの片道運転だ。蒸気機関車の反対側に、電気機関車またはディーゼル機関車を連結して、片道は電気機関車が先頭のEL碓氷、あるいはディーゼル機関車が先頭のDL碓氷になる。
レトロ客車の旅そのものが懐かしい
この日は高崎発横川行きがEL碓氷号だった。蒸気機関車のほうが人気があるとしても、いまや電気機関車やディーゼル機関車が引っ張る客車列車だって貴重だ。SLの現役時代は1970年代以前だから、50代以下の鉄道ファンとしては、EL碓氷、DL碓氷のほうが懐かしい。そもそも乗ってしまえば機関車は見えないわけで、レトロ客車の旅そのものが懐かしい。
EL碓氷は電気機関車特有の高い音で警笛を鳴らして出発する。最後尾のSLも発車時は汽笛を鳴らす。協力しながら走るから、これらの警笛は「走るよ」「おうよ」という会話である。走行中は蒸気機関車もサービスで汽笛を鳴らしてくれる。まるでSL列車に乗った気分になる。
EL碓氷の横川駅到着は10時49分。折り返しSL碓氷の発車は15時15分。約4時間半も横川駅に滞在する。この間は、横川駅発祥の有名駅弁「峠の釜めし」を食べよう。本店で温かい釜飯を出してくれる。腹ごしらえができたら、横川駅に隣接する「碓氷峠鉄道文化むら」の見物がオススメ。広大な敷地に、国鉄時代の名車がズラリと並べられている。
その間、横川駅にはSL碓氷号が待機していた。客車には入れないけれど、蒸気機関車と電気機関車をじっくりと眺められる。発車間際になって、ゆるキャラ「ぐんまちゃん」が見送りに来てくれた。群馬県立安中総合学園高校和太鼓部の演奏も始まる。県大会で最優秀賞を受賞し、全国大会でシード権を獲得した実力派。SL碓氷のお見送り役としても活躍中だ。
太鼓の音に被さるように、汽笛一声、SL碓氷号が発車する。快晴。いかつい妙義山の稜線もくっきり見えた。終着、高崎駅の構内にさしかかると、信越本線の上り線高架で上越線の線路をまたぎ地上に降りて、新幹線と上越線の間を走る。