文春オンライン

連載この鉄道がすごい

さようなら“湘南電車”カラーの115系、山岳路線の頼もしいヤツ

高崎駅から消える“昭和の面影”

2018/03/18
note

併走する115系が観たかったが……

「どうかな、来るかな」

「どうでしょうねぇ」

「こっち(SL碓氷号)が、ちょっと速いか……」

ADVERTISEMENT

「あ、来た。来ましたけど、遠いなあ」

「頑張れ115(笑)」

「追いつけないね」

「うーん、だめかあ、残念」

「ま、仕方ない」

「もともと、(並び走行は)見世物じゃないしなあ(笑)」

115系を目当てにしていたファンも多かったSLレトロ碓氷の車内(筆者撮影)

 なんの話かといえば、115系を観たかったのだ。蒸気機関車C61形が旧型客車を引っ張るSL碓氷号の高崎駅到着時刻は16時18分。吾妻線から上越線に直通する普通電車の高崎駅到着時刻も16時18分。この普通電車に、もうすぐ引退する115系電車が使われている。

 ダイヤに正確な日本の鉄道なら、2本の列車が並んで高崎駅に滑り込むかもしれない。多少はズレたとしても、SL列車の窓から、115系を眺められるかもしれない。木造客車の茶色い窓枠越しに、カボチャカラーの115系が見える。そんな額縁絵画のような写真が撮れたらいいなあ、と思っていた。もっとも、鉄道のダイヤは15秒単位で作られている。同じ16時18分着でも、こちらは16時18分00秒、あちらは16時18分45秒かもしれない。

カボチャを彷彿とさせる「湘南電車」カラーの115系

 最後の望みは「蒸気機関車を手前に、115系を奥に」という構図。115系は高崎駅に到着後、そのまま南側の留置線に入る。その様子を、SLも入れて撮れるかな。蒸気機関車を手前に、左1/3くらい入れて、奥に115系が去って行く。残念。それも無理だった。それぞれのプラットホームが離れている上に、蒸気機関車を撮ろうとする人垣ができていた。蒸気機関車の人気はすごい。

沿線にも多くのファンの姿があった

直流電化区間の普通列車用として3番目に作られた形式

 115系は国鉄時代に作られた近郊形電車だ。1963年から1983年まで20年間にわたり、1900両以上も製造された。活躍場所は東北本線、高崎線、上越線、中央本線、篠ノ井線、御殿場線、山陽本線など。115という形式の意味は、百の位の1が直流電化区間用、十の位の1は普通列車用。1の位の5はモデルナンバーで、奇数が主、偶数が副という感じ。だから5は3番目。ややこしいけど、まとめると、直流電化区間の普通列車用として3番目に作られた形式、それが115系だ。

 近郊形は座席配置を示す。短距離用と長距離用の間が近郊用。長距離用のボックス席がキホンだけど、乗降扉の付近だけは通勤電車のようなロングシートにした。つまり、通勤用と長距離用のいいとこ取りという座席配置になっている。ボックスシートは窓の外を眺めやすいし、空いてれば適度な隔離感で、駅弁やビールを楽しめるけれど、最近の電車では少なくなった。だから115系の近郊形ボックスシートは旅情をそそる。

首都圏では、群馬県内の路線が最後の活躍の場となった