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「建物の基礎を掘る時は何メートル、何十メートルも掘ります。地面を掘っていくと水が出るので、掘った側面に矢板と呼ばれる木の板で土止めにするんですが、その作業は"人の手"でしかできません。そこで土砂が崩れたり、わたしがすくった土砂から塊が転がり落ち当たればその人は命を落としてしまうこともあります。なので常にあらゆる危険を予測して、神経を張り巡らせてレバーを握っています」

 

 日々の仕事をこなすことで、現場での信頼を地道に積み上げてきた感覚はある。そんなKaoriさんでも、女性であることのハンデを痛感したのは「トイレ」の問題だった。

「広い現場だと、作業範囲の近くにトイレがないことも多く、歩いて10分かかることもあります。前の会社の置き場もそうで、男の人は立ちション前提。私が入ってから初めてトイレができたんです」

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「こんな過酷な環境でも頑張れるのは、ユンボに魅了されているから(笑)」

 しかし工事現場の中には、山の中の荒れ地を最初に整地するような仕事もある。そういう現場では、周囲にはトイレどころか建物もない場所も多いという。

 

「最近は大手のゼネコンさんだと移動型のトイレを設置してくれることもあるんですけど、作業中は作業が優先なのでタイミングを失うと我慢するしかない。それで膀胱炎になる人も多くて、私も何度もなりました。精神的にも不調になって無性に喉が渇くようになったこともあります。

 今はクルマに簡易トイレを積んでいるのでかなり改善しましたけど、トイレが近い現場はやっぱり嬉しいですね。置き場なら女性でもほとんど問題ないんですが、私のように『スキルアップしたい』と思うとまだ女性のハードルは正直高いです。ただ美容に気を遣う私がこんな過酷な環境でも頑張れるのは、ユンボに魅了されているから(笑)。そのくらいやりがいのある仕事なことは断言できますね」

 どこまでも前向きで、山や地面と同じように、自らの人生もダイナミックに切り開いてきたKaoriさん。今後も猪突猛進で突っ走っていくことだろう。