独立から2年、取引先や仕事は順調に増えている。2人の子供を育てるには十分な経済力も手に入れた。
「ありがたいことに、仕事を断ることもあるような状態です。声をかけてくれるのは、インスタで見てくれた社長さんからの仕事が半分弱くらい、あとは知りあいに紹介してもらったり、一度入った現場の人に『また頼むよ』って呼んでもらったり。お金ですか? 同年代の男性の平均よりは稼いでますよ(笑)」
それまで男性しかいなかった職場にKaoriさんが入ることで、工事現場の側に変化が起きることもある。同僚の男性にはそのことで感謝されることも多いという。
「工事現場は男の世界なので、怒鳴ったり、暴力に近いことをする職人さんも正直います。でも私が現場に入ることで、自然とそういうのが減ったと言われることはあります。逆に、それまではどこでもパンツ一丁で着替えられたのにやりにくくなった、という人もいるとは思うんですけどね」
「さすがに気軽に勧められる職場ではないですね…」
重機の操作は力仕事ではないので、そのことには全く男女差を感じていないというKaoriさん。経済的にかなり“稼げる”仕事であることも間違いない。それでも「さすがに誰にでも気軽に勧められる職場ではないですね……」と話す。
「工事現場はほぼ屋外なので夏は暑いし、冬は寒い。大型ユンボだとエアコンが装備されていることもありますが、ミニユンボは吹きさらしです。私は寒いのが苦手で、冬のミニユンボは本当に地獄ですね。手がかじかむのに、分厚い手袋だと微妙な操作ができなくなるから薄手のものしか使えない。現場が終わって家でお風呂で温めるまで感覚が復活しないんです。逆に夏はエンジンの熱がすごくて、ファンがついた空調服を着ても熱風でシートが水たまりになるくらい汗をかきます。今年は特に暑かったので、熱中症になる人も大勢いました」
身体的なタフさに加えて、工事現場は一瞬気を抜けば人命に関わる職場であり、身体的な強さと同時に精神的にも負荷はあるという。