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岡田が戦っているケガの“正体”

 球団からは手術を受けた、という発表はされるが、どんなケガで、どんな状態かまでの説明はない。岡田選手が戦っているケガはどんなものなのか。取材や私の経験を踏まえながら、少し説明したい。

 練習中、岡田選手が左ひざをさすりながらトレーナーに相談していたのは、昨年6月の交流戦明けのことだ。同12日の広島戦で、昨季の初出場を果たしたばかりだった。結局、7月2日に登録を抹消。同21日、球団からクリーニング手術をしたことが発表された。

 実は、この手術にはほとんど意味がなかった。岡田選手の半月板は、この時点でほぼ残っていなかったのだ。

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 半月板は太ももの骨(大腿骨)と、ひざ下の骨(脛骨)の間にある軟骨で、衝撃を吸収するクッションのような役割を果たす。

 ひざを深く曲げた状態でひねりの動作も加わる捕手の動きは、「走る」「跳ぶ」よりもはるかに負荷が大きい。股関節や足首が柔らかく使えない場合は、より大きな負担がひざにかかり、半月板が摩耗して損傷につながる。

 岡田選手が最初に半月板を断裂し、縫合手術を行ったのは19年。手術やリハビリが順調であれば、おそらく今頃普通にプレーできたはず。ただ、医療は当然、すべてがうまくいくわけではない。

 岡田選手の場合、術後、曲げ伸ばしの際に膝のひっかかりが解消されなかった。半月板の切れ目やゆがみの間に骨が挟まり、ひっかかるのだ。それでも、日々の試合や練習があるので、「無理やりガンガン曲げ伸ばししていた」という。

 これを聞いたとき、筆者はゾッとした。半月板自体は軟骨なので、損傷しても痛くない。だが、ひっかかりがあるまま無理やり曲げ伸ばしをすると、炎症が起こり、そのたびに激痛が襲う。

 筆者はこの状態で草野球を1試合やり、ひざ付近が倍ほどに腫れ上がった。トラウマで、手術後の今も曲げ伸ばしが怖い。

 岡田選手はしばらくこの状態でプレーを続け、次第にひっかかりがなくなったという。

 治ったわけではない。半月板が少しずつすり切れ、なくなってしまったのだ。半月板は再生しない。大腿骨と脛骨が直接ぶつかり合う形となった。このままでは骨が削れ、「変形性ひざ関節症」になる恐れもある。

 それで、荷重位置を修正するため、今年3月の「骨切り術」に至ったというわけだ。

痛みをこらえてでも……

 なぜ、19年、術後最初の違和感に気づいたところで、そんな無理をしてしまったのか。ケガに関する知識が乏しかったこともあるだろうが、筆者は岡田選手の野球人生も関係しているように思う。

 西武からドラフト6巡目で指名されたのは、13年秋だった。この年、後藤光貴スカウトが頻繁に見に来てくれていたことから、岡田選手は「指名されるなら西武だろうな」と期待していた。

「それが、1位が(同じ捕手の)森(友哉)ですよ。もう指名はないなと思って、部屋で寝ました」

 その1~2時間後、指名を祝う知人からの電話で起こされた。社会人野球の大阪ガスで6年目。残り少ないチャンスをものにできた瞬間だった。

 当時の西武には正捕手に炭谷銀仁朗がいた。そして同期には、将来を嘱望される後輩捕手。岡田選手は「プロは1軍にいてナンボ」の精神で、声出しなどのベンチワークを磨いた。チームメートはもちろん、ファンからもたしかな信頼を得た。

 19年は炭谷がFAで巨人に移籍した年だ。シーズン前の段階では、森もまだポジションを確固たるものにできていなかった。巡ってきたレギュラー取りのチャンス。痛みをこらえてでも、という気持ちがあったのは想像にかたくない。

 岡田選手は今、復帰への道を歩んでいる。筋力、体のキレや瞬発力、そして実戦感覚……。取り戻すべきモノは、山ほどある。それでも、正座ができるようになり、バットも振れるようになり、ジョギングができるようになり。スクワットの重量は180キロほどまで戻り、リハビリは順調に進んでいる。

 筆者の場合、術後4カ月ほどたった現在、筋トレは自分の体重ほどの重量まで、走るのは、ジョギングまで、という制限がある。そして、まだ、しゃがめない。

 少し先をいく岡田選手は、筆者の「希望」なのだ。

 選手としての姿勢にも感銘を受けた。8月末にインタビューをさせていただいたとき、離脱中も「後輩に何か言ってあげられることがあるかもしれない」と、1軍戦、2軍戦ともに欠かさず見ていると聞いた。だからこの選手は多くの人から愛されるのだと思った。

 チームのため、ライオンズファンのため、なにより岡田選手自身のため(そしてほんのちょっとだけ私のために……)、来季の復活を、心から待っている。

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