2023年10月2日。ジャニー喜多川元社長の性加害問題を受け、ジャニーズ事務所の社名変更が発表されました。新社名は「SMILE-UP.」。
ここでは、現役コピーライターである筆者が、“ネーミング”という切り口からジャニーズ問題を考察していきます。
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ネーミングには、商品やブランドによって、さまざまな役割が課せられます。例えば、機能や特性をわかりやすく伝えること、認知度を上げること、ブランドの世界観を伝えること、などなど。
今回のジャニーズ事務所の社名変更ではどうだったでしょうか。恐らくネーミングに課せられた1番の役割は「なるべく批判されないこと」だったのではないかと思います。
以前、私も、かつて炎上したことのある商品のリニューアルの際に、ネーミングを請け負ったことがありますが、当然ながら、そういう仕事はナーバスです。
あらゆる角度から「批判される可能性」が検証され、いつも求められているような「かっこいい」「かわいい」「目立つ」といった要素はなるべく排除し、可もなく不可もなく、批判しづらいポジティブな要素だけで構成したものが望まれます。人は、ちょっと目立っていて魅力的なものほど批判したくなるからです。
「何を出しても批判される」状態での社名変更
戦後最悪とも言われる人権侵害の真相が究明されようとするさなかであり、最初に行われた会見で社名を変更しないと明言した最悪の状況。新社名が批判されないなんて不可能なだけに、ジャニーズ事務所としても、「何を出しても批判される」という心持ちだったと考えられます。