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 日本では主演ではなく脇役のオファーを、積極的に受けるようにと助言した。いきなり主演という重い役割を背負うのではなく、脇役の立場から映画やドラマの現場を冷静に俯瞰して眺め、演技を磨いてほしかったのだ。脇役だから見えること、学ぶべきことは、たくさんある。主役はハリウッドに行ってからでいいのだ。

 幸い、2人とも確実にステップアップしている。天賦の才も間違いなくある。

二人の息子に授けた世阿弥の言葉

『るろうに剣心 最終章 The Final』を映画館で観たときは、真剣佑の芝居に驚かされた。これだけの動きができる役者は今の日本にはいないし、ハリウッドでもトップクラスだ。私は、自分を超えるアクションのできる日本人俳優に初めて出会った気がした。

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 その真剣佑には世阿弥が『風姿花伝』に記した「秘すれば花」という言葉を授けた。私の芸能生活60周年祝賀会でのことだ。「役者が花を咲かすためには人知れず努力しろ。どんな苦しい稽古も世の中に見せてはいけない」という意味に、私は解釈している。高倉健さんがまさに、そうだった。

幼き日の新田真剣佑と共に

 郷敦に授けたのは「離見の見」。やはり世阿弥の言葉だ。「芝居をしながら、真に役になりきっているか、自己満足に陥っていないかを、もう一つの自分の目で考えながら観察しなさい」という教えである。

千葉真一が果たすことができなかった人生最大の夢

 息子たちは、この言葉を胸に、日本でもハリウッドでも活躍してほしい。すでに真剣佑はアメリカでの活動をスタートさせた。それも、日本人俳優が成し得なかった主演である。真剣佑は、人気漫画『聖闘士星矢』を米ハリウッドで実写映画化する『Knights of the Zodiac』(原題)に主演する。

 この意義はとてつもなく大きい。

 ハリウッドでは主演を2度、3度と張ることで、発言権が増していく。自分が出る作品を選べる、つまり脚本を選べるようにもなっていくのだ。私は、すでに映画化可能な脚本を 20本近く持っているが、そのほとんどは真剣佑や郷敦のために書いたものである。真剣佑が『Knights of the Zodiac』に主演することが現実となったことで、次に親子でハリウッド作品の脚本と主演を務める

 という、ハリウッドでの「親子合作」の目標に、一歩近づけた。もし実現すれば、まさに感無量だ。

 すでに述べたように、私がアメリカで実現したかった最後の夢は、日本の「武士道」の精神を描いた作品をハリウッドの映画会社で撮ることである。

 息子たちが、その私の最後の夢をきっと、かなえてくれるはずだ。

記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。