文春オンライン

「発達障害=天才」は誉め言葉ではない…大阪大卒の30代女性が味わってきた"普通じゃないこと"の苦しさ

source : 提携メディア

genre : ライフ, 教育, 働き方

note

大学生活はうまくやれていたが、就職活動で苦労することになる。広告代理店で企画営業の職に就きたいと考えていた彼女は大手から順に受けていった。しかし、面接で緊張してまったく話せなかったり、事前に考えていた回答が飛んでしまうときもあった。また、予期せぬ質問がくるとうまく答えられなかった。

就活は自分をよりよくアピールしないといけなかったり、ときには本音と建前を使い分けなければならないことがある。本書で取材してきた当事者のほとんどが就活でつまずいていることからも、こうした就活テクニックと発達障害の特性は非常に相性が悪いのだと考えられる。

「周りの子たちは阪大というネームバリューからトントン拍子で内定が出ている中、自分だけ夏頃までずっと就活を続けていて。それプラス卒論の準備もあったので、両立ができなくて大変でした。いわゆるマルチタスクができなかったんです。結局内定が出たのは中小の印刷関係の会社でした」

ADVERTISEMENT

「勉強はできるけど社会ではやっていけないね」

この会社の人間関係が、村上さんを苦しめることになる。まず、気分に波のあるベテランの女性がいた。村上さんにはADHDのほか、言われたことを言葉のままに受け取ってしまうASDの特性もあった。そのため、そのベテランの女性とコミュニケーションをうまく取れないことが続いた。

「どうしてもケアレスミスが多く、そのたびにベテランの女性に怒られていました。そんなある日、ミスで怒られている最中「もう顔も見たくない」と言われたので「そうですか。わかりました」と、自分のデスクに戻ったら後から内線がかかってきて「今みたいなときは引き下がるところじゃないでしょ」と言われてしまい……」

教師から「もうお前は帰れ!」と怒られて本当に家に帰ってしまう小中学生のようだ。「帰れ」と言われたから帰ったという経験のある人は、思春期の場合は単に反抗しているケースが多いだろうが、中にはASDの特性からそのような行動を取ってしまった人もいるのかもしれない。

関連記事