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「発達障害=天才」は誉め言葉ではない…大阪大卒の30代女性が味わってきた"普通じゃないこと"の苦しさ

source : 提携メディア

genre : ライフ, 教育, 働き方

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残業をしなくてよかったり、困りごとが発生した際はすぐに誰かにフォローを頼めたり、マルチタスクでパニックにならないように段階的に仕事を振ってくれたりと、合理的配慮がなされているという。しかし給与は安く、年収は320万円程度だ。ただ、今までの会社もどちらかというとブラック寄りでもともと給与が少なかったので、経済的な面ではそこまで変わらないとも語る。

「今は結婚しているので夫と二馬力(共働き)で生活できている感じです。でも、同級生のSNSを見ると、今の私の給与ではとてもじゃないけど体験できないような趣味にお金を使っていたり、長期休暇の際はヨーロッパ旅行に行っている様子がアップされていて、同じ学歴なのに……と勝手にコンプレックスを感じて落ち込むことがあります。また、意地悪な同級生に会った際は「君の会社は資本金いくら?」と訊かれたこともありました」

「阪大卒」が彼女を苦しめている

経理の仕事においては会社によっては簿記の資格を取ると手当がつく場合もある。学生時代に猛勉強して阪大に受かったときのように簿記の資格を取らないのかと聞くと、「褒められないと勉強ができない」という答えが帰ってきた。村上さんは発達障害の苦しみも負っているが、父親との関係性も複雑であるように思える。

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「父親が厳しかったので、大学受験のときも試験で良い成績をとって良い大学に入れば親も喜んでくれるかなと思っていたんです。でも今、簿記の勉強をしても褒めてくれる人はいません。モチベーションが上がらないんです」

難関国立大学である阪大を卒業してもエリートになれない。そしてつい、定型発達で、うまくいっているように見える同期と自分を比べてしまう。「阪大卒」という本来なら喜ぶべき事実が、彼女を生きづらくさせているのだ。

姫野 桂(ひめの・けい)
フリーライター
1987年生まれ。宮崎県宮崎市出身。日本女子大学日本文学科卒業。専門は社会問題や生きづらさ。著書に『私たちは生きづらさを抱えている 発達障害じゃない人に伝えたい当事者の本音』(イースト・プレス)、『発達障害グレーゾーン』(扶桑社新書)、『「発達障害かも?」という人のための「生きづらさ」解消ライフハック』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)『生きづらさにまみれて』(晶文社)、『ルポ 高学歴発達障害』(ちくま新書)などがある。
「発達障害=天才」は誉め言葉ではない…大阪大卒の30代女性が味わってきた"普通じゃないこと"の苦しさ

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