平成から令和にかけて、お茶の間の人気を博したお笑いトリオ「ダチョウ倶楽部」の上島竜兵さん。2022年5月11日、61歳という早すぎる死に日本中が衝撃に包まれた。
突然の訃報から1年3カ月が経った2023年8月、上島さんと約30年間連れ添ってきた妻の上島光さんが、エッセイ『竜ちゃんのばかやろう』(KADOKAWA)を出版した。
死の直前、いったい何があったのだろうか。竜兵さんは、どうして死を選んだのだろうか。「コロナ禍以降、目に見えて落ち込む日が増えた」と話す光さんに、当時のお話を伺った。(全3回の2回目/続きを読む)
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よくニュースを見ながら批判していた
――書籍の中で、竜兵さんは独自の死生観を持っていたと書かれていました。
上島光さん(以下、上島) はい。「死んだらどんな世界だと思うか」という話題になると、竜ちゃんはいつも「死んだら無だ、何もない」、と。同時に、「病気や戦争、自然災害、苦しみなど、いろんなことが有るこの世こそ地獄だ」と常々言っていました。
――竜兵さんは悲しいニュースなどを見ると、自分のことのように苦しんでいた?
上島 自分のことのようにかは分からないですが、戦争の映像で赤ちゃんを抱いたお母さんが泣いていたり、子どもたちが傷だらけになったりしているのを見るのが耐えられなかったようです。よくニュースを見ながら、政治家やめちゃくちゃな行動をする犯人の批判をしていました。
辛かったら見なければいいんでしょうけど、新聞やニュースを見ていると、嫌でも悲しい情報が目に入ってきてしまう。その状態も、竜ちゃんは「地獄だ」と感じたのかもしれません。
「一緒に飲まないで」と注意しても聞き入れてもらえず
――もともと、不眠症にも悩まされていたそうですね。
上島 竜ちゃんは自分の体調のことをあまり話したがらないので、私も正確には分かりません。でも、どんなに疲れていても、どんなにお酒を飲んでも眠くならないからと、20年くらい前から睡眠導入剤を飲んでいました。