平成から令和にかけて、お茶の間の人気を博したお笑いトリオ「ダチョウ倶楽部」の上島竜兵さん。2022年5月11日、61歳という早すぎる死に日本中が衝撃に包まれた。

 突然の訃報から1年3ヶ月が経った2023年8月、上島さんと約30年間連れ添ってきた妻の上島光さんが、エッセイ『竜ちゃんのばかやろう』(KADOKAWA)を出版した。

 竜兵さんの死後、自身が乳がんを患っていることが発覚。「なんで私ばかりこんな辛いことが起こるんだろう」と思っていた光さんが、再び前を向けるようになったきっかけとは。そして、今後やりたいこととは――お話を伺った。(全3回の3回目/最初から読む

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©山元茂樹/文藝春秋

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この1年は「何もしたくない」という気持ちが強かった

――改めて、今回光さんが『竜ちゃんのばかやろう』を執筆することになったきっかけを教えていただけますか。

上島光さん(以下、上島) 著名な方が亡くなったとき、竜ちゃんはよく作詞家・永六輔さんの「人間は二度死にます。まず死んだとき。それから忘れられたとき」という言葉を口にしていました。きっとそう言っていた竜ちゃん自身も、忘れられたくないんじゃないか、覚えていてほしいんじゃないか。そう思って、竜ちゃんとの思い出を振り返った本を書き記すことにしました。

――竜兵さんが亡くなってから、1年以上が経ちました。

上島 この1年は、悲しい気持ちと悔しい気持ち、そして怒りの気持ちに揺さぶられてきました。竜ちゃんが亡くなってからは、「何もしたくない」という気持ちが強かった。でも最近は、「これまでは竜ちゃんファーストで生きてきたから、これからは自分をもっと大事に生きていこう。一人でも、前を向いていこう」と少しずつ思えるようにもなってきましたね。

©山元茂樹/文藝春秋

乳がんのセルフチェックでしこりを発見

――竜兵さんの葬儀から数ヶ月後に、ご自身が乳がんであることが分かったと聞きました。

上島 以前、テレビで家庭の医学を特集していたとき、「乳がんのセルフチェックの仕方」をレクチャーしていたんです。それを見てから定期的にセルフチェックをするようになって。

 竜ちゃんが亡くなって1ヶ月くらい経った頃、久しぶりにチェックをしてみたら“梅干しの種”のようなしこりを見つけたんです。「嫌な感じだな」とは思いましたが、まだ竜ちゃんの手続きも、引っ越しも終わっていなかったから、病院に行く時間がとれなくて。やっと病院に行けたのは、それから1ヶ月ほど経ってからでした。