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後輩たちとオンライン飲み会を楽しむように

――そのくらい、志村さんの存在は竜兵さんの生活の一部だったのですね。

上島 そうですね。ただ、コロナ禍中ずっと落ち込んでいたわけではないんですよ。外で飲み会ができなくなった分、竜ちゃんは後輩たちとオンライン飲み会を楽しむようになりました。それまで竜ちゃんはまったくパソコンが使えなかったのですが、パソコンの起動の仕方から手帳にメモして、自分一人でもオンライン飲み会をセッティングできるようになって。

 オンラインとは言えいつも長時間飲み続けるから、「短い時間でやめたほうが、後輩たちの負担が少ないんじゃない?」と言ったんですよ。そしたら竜ちゃんは、「違うよ。俺じゃなくて、後輩たちがなかなかやめないんだよ」と嬉しそうに話をしていましたね。

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©山元茂樹/文藝春秋

「僕も引退したい」突然の一言にどこまで本気か分からなかった

――ショックなことはありつつも、楽しそうにしている瞬間もあったと。

上島 今日はすごく落ち込んでいると思ったら、次の日には元気になっている。そんな毎日の繰り返しでしたね。でも、竜ちゃんはもともとそういう性格だったんです。だから、変化に気付くのが遅くなってしまって……。

 2022年の3月末に、俳優のブルース・ウィリスさんが引退するニュースを見た竜ちゃんが、突然「僕も引退したい」と言ってきたんです。普段からニュースをギャグに結びつけるような人だったから、このときもどこまで本気か分かりませんでした。でも、なんとなくいつもと違う雰囲気を感じて……。「本当にそう思っているなら、今のお仕事が終わってから引退を公表したらいいんじゃないか」と伝えたら、竜ちゃんはそのまま自室に戻ってしまいました。

©山元茂樹/文藝春秋

もし「引退したい」と言ったときに「話を聞こうか」と言ってれば…

 今考えたら、その頃にはいつもより落ち込んでいる日のほうが多く、すでに良くない状況だったのかもしれません。

 それから約1ヶ月後の5月10日の夜、竜ちゃんは今にも泣き出しそうな顔で「死んじゃいたい」とつぶやいた後、自室に籠もりました。それから私が竜ちゃんの異変に気付くまで、10分も経っていなかったと思います。救急車で運ばれた竜ちゃんは、5月11日の深夜にあっけなく旅立ってしまいました。

 もし、「引退したい」と言ったときに「話を聞こうか」と言ってれば。もし、病院を頑なに拒む竜ちゃんを、無理やりにでも連れて行っていれば。もし、5月10日の夜、私も一緒に竜ちゃんの部屋に入っていれば。

 あれから1年以上経った今でも、そう思ってしまうんです。