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――その場のリアクションが悪ければ、買い付け自体を断念する可能性もあったんでしょうか?

粉川 買い付けること自体は自分の中で決めていたので、別の会社に相談に行っただろうと思います。もしも無下にあしらわれたら、SNSで悪口を書いていたかもしれませんけどね(笑)。

 戦略的な面を話してしまうと、「まだ世の中のことをよく知らない20代の女性の冒険に付き合ってくれたら、会社としてのブランディングにもつながるのでは?」という提案もしたんです。

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 結果的には、朝日新聞社だけでなく、KADOKAWA、ねこじゃらし、ユナイテッド・シネマといった企業に協力してもらうことができました。

クラウドファンディングの支援額が伸び悩み…

――結果的に数々の大企業が製作に協力してくれるようになったわけですが、独立直後に不安はなかったですか?

粉川 めっちゃありました。先のことを考えると怖すぎて、ひとりで泣いちゃう日もありましたよ。期待していた融資が「映画配給は波がある事業だから」という理由でおりなかったこともダメージが大きかったですし、クラウドファンディングで集まったお金を製作費の足しにしようと思っていたものの、最初の1か月くらいは40万円くらいしか集まらなくて……。

「このままじゃ独身で、彼氏なしで、映画の権利だけを持った一文無しになってしまう……」みたいな。

粉川なつみさん ©文藝春秋

――はじめは低調だったというクラウドファンディングですが、最終的には933万3105円もの支援が集まりました。なにかきっかけがあったのでしょうか?

粉川 間違いなく、別所哲也さんのラジオ「TOKYO MORNING RADIO」に出演させていただいたことですね。

 その前から作品そのものを応援してくれる人は多くて、特にマニアックな海外アニメファンの方は私以上に宣伝してくださっていたんですが、そういった方の周りの方はすでに支援してくださっていることも多くて、なかなか作品の認知も広まらず、支援額も伸びないという状況でした。

 そんなとき、ハフポストさんに取材してもらった記事を読んでくれた、別所さんのラジオスタッフさんが出演依頼をくれたんです。出演後は作品や取り組みへの認知がどんどん広がっていきました。最終的には、クラウドファンディング締切前のラスト3日間だけで400万~500万円くらいの支援があったんですよ。

別所哲也さんのラジオに出演してから支援の輪が広がった ©文藝春秋

 最後の3日間で支援額全体のほぼ半分くらい。興奮しちゃって、締め切り前には数分おきにブラウザをリロードしていました。すると、更新するたびに支援額が増えていくんです。金額だけではなく、応援してくれている人がどんどん増えているという事実に思わず感動しました。