2023年、日本で初めてウクライナのアニメーション映画が大規模上映された。作品名は『ストールンプリンセス:キーウの王女とルスラン(以下、ストールンプリンセス)』。INIの髙塚大夢さんが声優に初挑戦した同作は、海外アニメーションという枠に留まらないほどの話題を呼び、その立役者である粉川なつみさんは日経WOMANが主催する「ウーマン・オブ・ザ・イヤー2024」を受賞した。
ほぼ全財産を費やして“個人”で配給権を獲得し、上映に至るまでの道のりは数え切れないほどのハードルがあった。公開前には先行きが見えず、ひとりで涙を流す日もあったと語る彼女がいま抱く意外な野望とは。
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INI髙塚さんの声優抜擢は“一耳惚れ”と“戦略”
——予算が潤沢にあるわけではなかったと思いますが、それでも字幕ではなく吹き替え版を製作することにこだわったのはなぜでしょうか?
粉川 やっぱり子どもたちに観てほしいからですね。子どもたちに楽しんで観てもらって、ウクライナという国を知ってもらうきっかけにしたかったので、そのためには吹き替え版の製作はマストだと思っていました。
あと、小規模に上映してすぐ終わりになってしまうようでは、支援にならない(編集部注:『ストールンプリンセス』は利益の一部をウクライナに寄付することが公開前から決まっていた)ので、できる限り上映館を広げていかないといけないという使命がありました。そのため、吹き替えに日本での知名度が高いキャストの皆様を起用させていただくことで、より多くの方に本作を知っていただこうという考えもありましたね。
——主人公ルスランを演じられた「INI」の髙塚大夢さんのファンからの応援の声がよく聞かれますが、起用のきっかけは?
粉川 髙塚さんに関しては、たまたま私がラジオを聞いて「ルスランにぴったりの声!」と思ってお声をかけさせていただきました。
多くの企業や個人の方々に出資、支援していただいているので、どうしてもコケるわけにはいかなかったんです。声もぴったりですし、真面目な方だと聞いていたので、全力で取り組んでくださるはず……! と思い、どうしても髙塚さんには出演してほしかったですね。