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【追悼】89歳の妻を1人で……財津一郎さんが語っていた“老老介護”の現実「大事なのは絶対に暗くならないこと」

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 いつまでも1人でやれない――。冷静に胸中を語る財津。だが、中にはそう思うことができず、なかなか家族や周囲の言葉に耳を傾けないケースもあるという。

「そういった場合、かかりつけ医さんやケアマネジャーなど、第三者から介護保険のサービスを勧めてもらいましょう。老老介護の場合、介護者が先にダウンしてしまうことも少なくありません。元気なうちに一緒にショートステイやデイサービスへ出かけるのもいい。デイだとお風呂にも入れてもらえます。介護者がお風呂へ入れると、転倒の危険性もあります。

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 色々なサービスをお試しで受けると、外出への意欲も湧く。相性が悪ければ止めてしまってもいいのですから」(太田氏)

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老老介護で大事なことは「絶対に暗くならないこと」

 僕は脊柱管狭窄症になったとき、朝も起き上がれなかった。要介護認定も最初は要介護3だった。

 ただ、毎朝20分くらい体操をやっているんだ。まず亀の子タワシをふたつ持って、心臓から遠いところよりこすっていく。足の先からね。そしてストレッチをやって、体操。病気のせいで足首とひざが固くなっているから、ストレッチで体を伸ばして温めないといけない。これは「生きているかぎりやる」と決めている。朝5時半くらいに起きてね。

 すると、要介護度が2に下がった。朝の習慣のおかげだと思っています。体を動かすことは皆さんにお勧めしたいね。

右は「てなもんや」の盟友・藤田まこと(1994年)

 あと、スコアを気にしない“健康ゴルフ”。何日も前から入念にストレッチして体操して、ようやく行ける。こういう楽しみがないといけない。帰るときはママが心配だから、風呂も入らず、逃げるように戻ってくる。帰りながら、晩飯のことも考える(笑)。

 皆さんにお伝えしたいのは、老老介護で大事なのって「絶対に暗くならないこと」なんだ。

 僕は、ゴルフをやると明るく、元気になれる。家を空けてママに迷惑をかけるときもあるけど、自分が明るくなれるものがないと、介護なんてできない。やはり根アカで生きないと。これは明るいとか華やかということだけじゃない。ピンチのときこそ志を持つ、ってことだと思っている。

 年明け2月には、僕も86。人生最後のホームストレッチに差しかかっている。競走馬やアスリートは全速力で駆け抜けようとするけど、僕は一日一日焦らずかみしめてね、ゆっくり一歩一歩ゴールに向かっていくような心境なんです。

 皆さんも、花も嵐も踏み越えて、がんばってチョーダイッ!

【追悼】89歳の妻を1人で……財津一郎さんが語っていた“老老介護”の現実「大事なのは絶対に暗くならないこと」

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