2022年11月の開園以来、早くも愛知県を代表する人気スポットとなっているのがスタジオジブリ作品の世界観を表した公園施設・ジブリパーク(愛知県長久手市の愛・地球博記念公園内)だ。その一角で、空間を創造した張本人、ジブリパークの制作現場を指揮する宮崎吾朗さんに話を聞いた。(全2回の1回目/続きを読む)
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気づかれないところまでつくり込む理由
宮崎吾朗さんとの対面前にジブリパークを巡って驚いたのは、回るだけでも1日がかりとなりそうな広大さと、あらゆる細部のつくり込み。公園に点在するエリアを結ぶ山道の標石の上に、ひっそりと置かれたドングリのオブジェ。昨年オープンしたエリア「ジブリの大倉庫」内の壁面に貼られたタイルを用いて描きこまれたキャラクターたちの姿。ジブリの大倉庫の階段裏の暗がりには、映画『コクリコ坂から』に出てくる哲学研究会の部室がひっそりと表現されていたりもする。
めったに気づかれないのでは? というところまでつくり込むのは、いったいなぜなのか。
「それは僕自身、隙間があるとつい埋めたくなってしまうからですね。恐怖心、みたいなものもあるのかもしれません。何かで埋めておかないと、ぽっかり穴が開いてしまってそこにおもしろくない空間ができてしまう恐怖というか。ジブリパークの中心にある『ジブリの大倉庫』は室内温水プールだった建築物を利用しています。もとの建屋を生かしつつ内部を大倉庫に造り替えたので、あちこちに隙間ができるのですが、それを放っておけず、つい何かを置いたりつくったりしてしまった。へんな隙間こそおもしろくて、『何かに使ったら』ということをつい思ってしまいます」
「ただの家」が伝える作品の世界
「どんどこ森」にある人気施設「サツキとメイの家」には、『となりのトトロ』に出てくる“草壁家”の住宅が建てられている。2005年の「愛・地球博(愛知万博)」の開催に際して建設されたもので、ジブリパーク開園のきっかけのひとつとなった場所でもある。部屋に設けられた棚やタンスの中には生活道具がぎっしりしまってあって、ここにも細部へのこだわりが垣間見える。見えないところまでつくり込むのも、また性分?
「中身が入っていないということは、外観から気づくと思います。中身が空っぽなのとちゃんと詰まっているタンスでは、存在感が違います。あとは、単に詰めてみたいだけという気持ちもありますね(笑)。そこまでやったらおもしろいだろうなと。
さらにいえば、『サツキとメイの家』は古い家が再現してあるだけで、見せものとしてはただの家です。でも実際にかまどでごはんが炊けるし、お風呂も沸かして入れます。本当に住める家にしてあれば、『ああ、トトロの世界だ』と思ってもらえるんじゃないかと」