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施設型テーマパークの話は以前からいくつもいただいていた

 ジブリパークはあくまでも公園であり、大規模テーマパークではないとの考えが徹底されているのだ。せっかくジブリの施設をつくるなら、「愛知県にぜひ、東京ディズニーランドや大阪USJに並ぶものを!」と期待する向きもあったろうが、そうした声は気にならなかったのか。

「『ジブリランド』みたいな施設型テーマパークをつくってくださいといった話は、たしかに以前からいくつもいただいていました。どういうものができ得るか、話し合いをしたこともあります。

 ディズニーランドをモデルケースとするなら、たとえばシンデレラ城の代わりに『千と千尋の神隠し』の湯屋をドンと中心に置き、その周りにいろんなゾーンを設ける。『紅の豚』ゾーンなら池を掘って真ん中にレストランを設け、飛行機に乗り込むアトラクションをつくって……。そんなふうに想像していくのですが、なんだか全然おもしろそうじゃなかった。

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©杉山拓也/文藝春秋

本物や実物を用いてつくりこんでいくジブリの世界観

 作品世界を再現しようとすると、ジブリの場合どうしても、ごくふつうの光景になってしまい“夢の世界”感が出せないのです。たとえば『となりのトトロ』なら、『サツキとメイの家』以外だと田んぼの景色をつくるしかありません。それをわざわざテーマパークに再現しても完全な作り物になってしまい、全くそれはピンとこない。

「どんどこ森」にある「サツキとメイの家」。押入れを開けると布団や寝間着が置かれている ©杉山拓也/文藝春秋

 結局、ジブリの世界観を出すなら、このジブリパークのようなものに落ち着く気がします。『サツキとメイの家』に象徴的ですが、本物や実物を用いてつくり込んでいく方がジブリっぽくておもしろいんですよね。

 そう考えると、ジブリ映画というのはかなりリアリズムなのだな、とも気づかされます」