「わしはタニマチじゃないし、あくまでもその芸能人と友だちという感覚で飲んでいるので、今回はわしが払ったら次は相手が払うという五分の関係だ。それが人と人との付き合い方だと思う」
芸能人とはギャンブルに興じない、五分と五分の関係で付きなうなど、トラブルを起こさないための「ヤクザ業界の独自ルール」を解説。その道66年、元ヤクザの正島光矩氏(1940年生まれ)による初の著書『ジギリ 組織に身体を懸けた極道人生』より一部抜粋してお届けする。(全2回の2回目/前編を読む)
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芸能人と飲むときの作法
芸能人とは普通のクラブで飲むことが多かった。
芸能人や野球選手など目立つ人間が遊ぶ銀座のクラブに行くこともあったが、向こうに一方的に払わせたり、わしが一方的に払うようなことはしなかった。
わしはタニマチじゃないし、あくまでもその芸能人と友だちという感覚で飲んでいるので、今回はわしが払ったら次は相手が払うという五分の関係だ。それが人と人との付き合い方だと思う。
いくら売れっ子で金を持っている相手でも、わしがおいしい話でシノギがうまく行って、財布に何百万円入っていたとしても、それは関係ない。
そのような付き合い方をしないと人間関係はうまく回らない。
五分のバランスが取れてはじめて、人間関係は長続きする。それが人生のコツだと感じているし、今も間違っていたとは思っていない。
表向きだけで付き合っていると人間関係はうまく回らない。一度でも飲んで相手を気に入って「今度また飲みましょう」と、本音で付き合わないと駄目だ。
実際に芸能人と飲むときも、相手がひとりで来たりマネージャーと来ることもあったが、マネージャーもわしのことを信用しているから、一緒に飲んだり、芸能人だけを置いて帰ることも多々あった。
飲みに行く話も、マネージャーを通しての連絡や本人から直接電話が来たりもしていた。なかでも山城新伍とは一番多く飲んだ。
芸能人とギャンブルはしない
また、芸能人と賭け事などはしなかった。
ヤクザや芸能人は高レートの麻雀など賭け事を派手にやるイメージがあるかもしれないが、わしはそんなのは好きではなかった。
芸能人が賭け事で大きく負けて、そのトラブルの処理をやっていた関係もあると思う。せいぜいわしがやるのは身内同士の小さな賭け事くらいだった。賭け事でのトラブルは、嫌というほど見てきた。