「まだまだお子ちゃまねぇ。一番大事なのは、“これ”よ」

 親指と人差し指で丸を作り“ゼニ”のサインを出しニヤリと笑うのは、女優の余貴美子(67)。これは放送中のドラマ『家政夫のミタゾノ』(テレビ朝日系)のワンシーン。余は、主人公の家政夫・三田園が所属する「むすび家政婦紹介所」の所長・結頼子を演じている。

「家政婦のミタゾノ」で演じる結頼子(ドラマHPより)

横浜・桜木町界隈で育ち、女優の范文雀は父方のいとこ

 本作は、松岡昌宏扮する三田園が派遣先の家庭の内情を覗き見て、次々と秘密を暴いていく人気ドラマ。松岡をはじめとする家政婦たちが「むすび家政婦紹介所」に集い、井戸端会議を繰り広げるシーンは毎回お決まりで、所長の結はこの場面で含蓄ある言葉を吐く。冒頭のセリフは、理想の結婚を語る若い家政婦に向けたひと言だ。

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 やさしい母親からワケアリの妖艶な女性まで幅広い役柄を演じ分ける余は、1956年、台湾人の父と日本人の母の間に生まれ、横浜・桜木町界隈で育った。『サインはV』などへの出演で知られる女優の范文雀は、父方のいとこだ。

事務所HPより

「范が寺尾聰と結婚した際には、余も結婚式に出席。ミーハーだった少女時代の余は、出席者の石原裕次郎や浅丘ルリ子ら豪華な面々にキャーキャー言っていたのだとか(笑)。一方で、彼女自身の青春ライフも華やか。高校時代から元町のジャズ喫茶やライブハウスに出入りして朝まで遊んでいたそうです。当時から端正な容姿で知られていて、“ハマのマリア”と呼ばれていたそうです」(芸能事務所関係者)

劇団をリストラされた仲間たちと劇団『東京壱組』を旗揚げ

 高校卒業後は、飛行機の客室乗務員になることを夢見ていたが、友人に誘われて「オンシアター自由劇場」のオーディションについていったところ、余だけが合格。期せずして演劇の世界に入った。

「当時から肝が据わっていた。妖精の役を演じた際、演出家に『妖精は服を着ていないだろう』と言われると、ためらうことなく全裸に。小さなフンドシで局部を隠し、乳首に鳥の羽根を張り付けただけの格好で舞台に立った。給料なんてほとんど出ない貧乏生活の中で芝居を続けるも、30歳を前にして突然、劇団から手紙が送られて来て、クビを告げられた。解雇の理由は『芝居が下手で、集団行動も苦手』だったとか」(演劇関係者)

 それでも芝居を諦められなかった余は、同じく劇団をリストラされた仲間たちと劇団『東京壱組』を旗揚げ。看板女優として活躍する。