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 慣れない仕事で疲労は溜まる一方だった。プロ野球選手時代とは種類の違う疲れだった。

「オープンしたての頃はずっと店にいました。朝から夜までやることが多すぎて、あの頃の記憶はほとんどありません。一日があっという間に過ぎていきました。やることがムチャクチャ多いので、体を動かしながら頭も使っていました。同時にいろいろなことをやらないといけない。大変だったけど、いい経験ができたと思います。それがのちのち生きてくればいいなと。

 いつもネガティブなことを考えていて、考えすぎたら不安になるし、迷うし……メンタル的にはキツかった。息抜きなんか、全然できませんでした」飲食業も一日一日が勝負

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 プロ野球と飲食業。その違いに戸惑いながら、米野は新しい世界でもがきながら奮闘した。

「プロ野球にいた時は、1年ごとに契約更改があって年俸が決まります。12等分された金額が毎月振り込まれるので、日々のお金の不安はありません。そこが決定的に違うところですね。飲食店では、家賃や材料費、人件費や光熱費などいろいろな経費がかかる。

 だけど、飲食業も一日一日が勝負。その日の売り上げが少なかったら、どこかで挽回しないといけない。そのために集中力、瞬発力が必要なんですが、そういうところは野球の世界と似ていると思いました」

 まったく違う世界だが、共通点があることに気づいて、米野の気持ちは楽になった。

「店の営業時間が11時30分から15時、17時から23時だとしても、僕たちはお客さまが入っていない時間帯もずっと働いています。プロ野球もそうで、試合自体は3時間で終わるかもしれないけど、昼から球場に入って体を動かしたりデータを分析したり、拘束時間がものすごく長い。

 準備に時間をかけるところはものすごく似ていますね。準備を怠ったら結果に出るというのも同じ。だから、準備をちゃんとしておかないと」

 どの世界でも、人から見えないところでの努力や準備が求められている。

「プロ野球では、故障をしないための準備、パフォーマンスを上げるための準備をしないといけない。逆に言えば、準備さえできていれば、多少、想定外のことが起きても、うまく回ってくれる」