「もっとしっかりしなさい」「あなたのためを思って言ってるんだから」「大丈夫だよ」「頑張って偉いね」――いずれも、親が子どもに言ってしまいがちな言葉である。しかし、このような、親が良かれと思って発した「一言」が子どもの脳に深刻な悪影響を与えてしまう可能性があるという。子どもの認知力、自律力、思考力を伸ばすために、親はどのような言葉を使えばいいのだろうか?

 ここでは、文教大学教育学部の成田奈緒子教授と公認心理師の上岡勇二氏の共著『その「一言」が子どもの脳をダメにする』(SB新書)より一部を抜粋してお届けする。(全2回の2回目/1回目を読む)

写真はイメージ ©iStock.com

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「ちょうどいい」って言ったのに!――カズヤ(小5)のケース

 来年、中学受験のカズヤ。志望校選びに悩んでいると、父親は「私立B中学が偏差値的にちょうどいいと思うよ」とアドバイスをしました。父親のすすめから、カズヤは私立B中学を受験することを決めました。そうして1年後——。私立B中学に不合格となってしまったカズヤ。 

 結局、公立のF中学に入学することになりました。「F中学もいい学校だぞ」と慰める父親に、「F中学なんかクソだ! B中学なら合格できるって言っただろ!」とカズヤ。

 その日を境に部屋に引きこもり、不登校になってしまいました。

「通学時間」「学費」について子どもに考えさせる

 志望校は偏差値だけで選ぶべきではありません。偏差値はもちろん目安にはなりますが、校風、立地、特徴のあるカリキュラムなど、親は子どもにいろいろな視点を与えてあげましょう。

 高校受験をする年齢なら、子どもはもう十分に物事を総合的に判断できるような脳が育っているので、親はノータッチが一番。しかし、中学受験の場合には、親のサポートが必要です。