「もっとしっかりしなさい」「あなたのためを思って言ってるんだから」「大丈夫だよ」「頑張って偉いね」――いずれも、親が子どもに言ってしまいがちな言葉である。しかし、このような、親が良かれと思って発した「一言」が、子どもの脳に深刻な悪影響を与えてしまう可能性があるという。子どもの認知力、自律力、思考力を伸ばすために、親はどのような言葉を使えばいいのだろうか?

 ここでは、文教大学教育学部の成田奈緒子教授と公認心理師の上岡勇二氏の共著『その「一言」が子どもの脳をダメにする』(SB新書)より一部を抜粋してお届けする。(全2回の1回目/2回目に続く)

写真はイメージ ©iStock.com

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メイクをしてみたい——リカ(中1)のケース

 ある休日。友達と遊びに出かけるリカの顔に、ファンデーションと口紅が塗られていました。驚いた母親は「中学生なのに、お化粧なんかするんじゃありません! 大人になったらいくらでも化粧なんてできるんだから」とメイクを落とさせ、化粧品を没収。「子どものうちは素顔が一番きれいなんだから」とリカを諭しました。

 数日後——。友達と街を楽しそうに歩いているリカ。2人はファッションビルの化粧室に入って行きます。

 化粧室から出てきたリカと友達の顔には、メイクが施されていました。

「正論」を言っても反発されるだけ

「中学生なのに、お化粧なんかするんじゃありません!」 

「大人になったらいくらでも化粧なんてできるんだから」 

「子どものうちは素顔が一番きれいなんだから」

 リカの母親の言うことはどれも正しいことばかりです。

 子どもの肌はみずみずしくツヤツヤしています。大人の私たちは、そんな肌のきれいな時期はほんの少ししかないことを知っています。

 しかし、それはいわゆる「正論」です。正しいことは確かですが、正論を振りかざしても、何の解決ももたらしません。リカのように、隠れてこっそりお化粧をすることになるか、反抗するようになってしまうでしょう。