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依頼は7割がDV被害、2割がストーカー被害

――宮野さんは「夜逃げ屋」でどんな仕事をしているのでしょうか。

宮野 簡単に言うと、DVやストーカー被害などに悩む方向けの「引越屋さん」です。荷物を梱包したり、新居まで運んだり、やることは引越屋さんと変わりません。ただ、「加害者が外出している数時間で作業を完了させる」「引越し先は加害者に絶対バレてはいけない」など、普通の引越しよりも気をつけることは多いですね。

加害者にバレないよう、迅速に引っ越し作業を完了させる必要があるという(写真=宮野さん提供)

――「夜逃げ」といえば、借金から逃げるためというイメージが強かったのですが、実際にはDVやストーカーに悩んでいる方からの依頼が多いのですか?

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宮野 僕の関わった現場に限った話かもしれませんが、借金苦で夜逃げをする方はあまりいません。依頼の割合は、DV被害が7割、ストーカー被害が2割を占めています。

――DV被害が依頼の半数以上を占めているのですね。

宮野 街を歩いていたら、道行く人がDVの被害を受けている、もしくはDVをしているなんて誰も思わないじゃないですか。加害者はむしろ「世間からの評価が高い」人も多い。でも、家族やパートナーにだけ裏の顔を見せるんです。

近所の人が夫に連絡するかも…ずっと恐怖と戦っていた依頼者

――漫画に出てくる依頼者、石田理恵さん(仮名・36歳)のケースもそうでしたよね。町内会長とPTA役員をこなし、近所では「人格者」と慕われている夫から、石田さんは日常的に暴力を受けていた。

宮野 石田さんと似たケースは、正直めちゃくちゃ多いです。この場合、被害者が周囲に助けを求めても、「あんなに良い人が、DVなんてひどいことをするはずがない」「怒らせるようなことをしたあなたが悪い」と被害者が責められてしまうこともある。さらには、「あなたの奥さん、こんなことを言っていたよ」と加害者に告げ口してしまう人もいます。

夫から日常的に暴力を受けていた石田理恵さん・36歳(仮名)は、夫の留守中に夜逃げを決行する(『夜逃げ屋日記』より)

――だから、石田さんも周りに助けを求められず、「夜逃げ屋」に依頼してきた、と。夜逃げ当日の石田さんはどんな様子だったのでしょう。

宮野 顔にひどい怪我をしていましたね。「今朝、夫に灰皿を投げられた」と。だからまず怪我の手当てをしようとしたら、「それよりも早く逃げたい」と言われたので、気になりながらも引越し作業を進めることにしました。