ちょっとしたあざや絆創膏程度の傷だったら、僕のように何も言わない人の方が多いと思うんですよね。「このくらいの怪我なら、よくあることだよな」って。石田さんの近所の人たちも、きっとそうだったんじゃないかと思います。

加害者にバレたときは…

――石田さんのケースでは、パートナーが帰宅する前に無事に夜逃げできましたが、夜逃げ中に加害者と鉢合わせしてしまうケースもあるのでしょうか?

宮野 もちろん鉢合わせしないように最大限調整しますが、何回かありますね……。もう、鉢合わしせたら気まずいなんて次元じゃない。逆上した相手に、依頼者や僕たちが危害を加えられる可能性もある。僕も刃物を突きつけられたことがあります。

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加害者にバレたときも、何とかして夜逃げを完遂させるという(写真=宮野さん提供)

――鉢合わせしてしまった場合、夜逃げはどうなるのでしょうか……?

宮野 相手はDVの加害者であると同時に、その家の居住者でもあります。だから、「人の家で何やってるんだ」「訴えるぞ」と言われたら、一般的な引越屋さんだと引き上げるしかないはず。でもその後、被害者がどうなるかは想像に容易いですよね。

 いつも以上に暴力を振るってくるかもしれない。そうでなくても、逃げないようにスマホを取り上げられ、家に軟禁されるかもしれない。そうなると、被害者から僕たちに連絡する術がなくなってしまいます。命の危険だってあるかもしれないのに。

 だから加害者にバレたときこそ、なんとしてでも夜逃げを完遂させないといけないんです。

次の記事に続く 家族に「病原菌」と呼ばれて“奴隷扱い”…「30年以上虐待され続けた」36歳男性が“夜逃げ”で地獄の生活から抜け出すまで【マンガあり】